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2010年07月21日

The Lamb Lies Down On Broadway/GENESIS (ジェネシス)

B000002J1SLamb Lies Down on Broadway
Genesis
Atlantic / Wea 1994-09-20

 GENESIS(ジェネシス)の最高傑作との呼び声も高い前作『Selling England By The Pound(月影の騎士)』(1973年)の制作過程と内容に不満を持っていたPeter Gabriel(Vo.ピーター・ゲイブリエル)が、自らの欲求を満たすために湧き出るアイディアを余す事無く注ぎ込んでPeter Gabriel色一色に染め上げた傑作コンセプト・アルバム『The Lamb Lies Down On Broadway(眩惑のブロードウェイ)』(1974年)。知名度的にはあまり一般的なアルバムではありませんが、その内容と完成度はThe Who(ザ・フー)の『Tommy』、Pink Floyd(ピンク・フロイド)の『The Wall』等の傑作コンセプト・アルバムと並べてもまったく遜色の無い、奇才Peter Gabriel渾身の一作です。


Disc:1
[LP Side A]
1. The Lamb Lies Down On Broadway(眩惑のブロードウェイ)
2. Fly On A Windshield(風防ガラスを探して)
3. Broadway Melody Of 1974(1974年のブロードウェイ・メロディ)
4. Cuckoo Cocoon(おかしな繭のなか)
5. In The Cage(囚われのレエル)
6. The Grand Parade Of Lifeless Packaging(生命なき人形の大行進)
[LP Side B]
7. Back In N.Y.C.(追憶のニューヨーク)
8. Hairless Heart(ヘアレス・ハート 間奏曲 I)
9. Counting Out TIme(カウンティング・アウト・タイム)
10. Carpet Crawlers(カーペット・クロール)
11. The Chamber Of 32 Doors(32の扉の部屋)

Disc:2
[LP Side C]
1. Lilywhite Lilith(百合のようなリリス)
2. The Waiting Room(ウェイティング・ルーム 間奏曲 II)
3. Anyway(エニウェイ)
4. Here Comes The Supernatural Anaesthetist(超自然的な麻酔手)
5. The Lamia(妖婦ラミア)
6. Silent Sorrow In Empty Boats(エンプティ・ボート 間奏曲 III)
[LP Side D]
7. The Colony Of Slippermen (The Arrival/A Visit To The Doktor/Raven)(スリッパーマンの居留地/到着/ドクター・ダイパーを訪ねて/ワタリガラス)
8. Ravine(峡谷 間奏曲 IV)
9. The Light Dies Down On Broadway(ブロードウェイの光は死に絶えて)
10. Riding The Scree(断崖のレエル)
11. In The Rapids(急流との戦い)
12. It.(イット)

Peter Gabriel - Vo.ピーター・ガブリエル
Tony Banks - Key.トニー・バンクス
Mike Rutherford - B.マイク・ラザフォード
Steve Hackett - G.スティーブ・ハケット
Phil Collins - Dr,Vo,Per.フィル・コリンズ

 ニューヨーク・ブロードウェイのプエルトリカンの不良少年レエルが、空想の精神世界の中で時空間を飛び越えて、様々な不思議な人々との出会いとイマジネーション溢れる世界を旅しながら、分裂した自我を発見していくというストーリーなのですが、精神分裂的思考、中世ヨーロッパの神話、伝説、そして宗教的な比喩などの要素が含まれていたりと非常に難解な内容であり、その上(ヒプノシス制作のジャケットにも提示されていますが)レエルが急流に流される兄ジョンを助けるとその顔は自分と同じ顔だったという、実はそれまで物語の主人公だと思っていたレエルとその空想の舞台は兄ジョンが生み出した精神世界の中での物語であり、自分の生み出したレエルが精神世界の中でジョン自身を救済し、最後は自分探しの旅の果てに同化するというような衝撃的、且つ更に難解な結末(という風に解釈しているのですが…)。特に日本人には感覚的にも分かり難い分野であり、欧米人にも難解なものを日本人が完全に理解しようとするというのも難しい話で、ある程度のストーリーの流れだけ把握しておいて、後は難しいことは考えないでジェネシスの音世界に身を任せながらリスナー自身でイマジネーションを拡げていく、というのが一番良いのかもしれません。それに応えるだけの内容をこのアルバムを持っていますし、聴く人それぞれに様々な情景や色彩を魅せてくれるはずです。

 前作『Selling England By The Pound(月影の騎士)』(1973年)がPeter Gabriel(Vo.ピーター・ガブリエル)を除く4人のメンバー主導で制作され、ヴォーカル・パートを減らされた上、自らのアーティスティックな表現の場を奪われつつあると危機感を感じていたPeter Gabrielは、演奏パートの録音が終了して他のメンバーがスタジオを離れた後もスタジオに残って歌詞を書き続け、Tony Banks(Key.トニー・バンクス)がインスト・パートとして作った部分に歌を載せたり、Steve Hackett(G.スティーブ・ハケット)のギター・ソロを消してヴォーカルを入れるなど、出来上がっていた演奏パート部分をメンバーに無断で大幅に改編するという暴挙に出ます。このことは、最終的に出来上がったアルバムを聴いた他のメンバー、特にTony BanksとSteve Hackettを激怒させる結果となりますが、アルバムは優れた傑作に仕上がり、Peter GabrielはGENESIS(ジェネシス)で遣るべき事は遣り尽したとばかりにアルバム発表後のツアーを終えると他のメンバーの困惑をよそにあっさりとバンドを脱退してしまいます。
 これぞPeter Gabrielのアルバム、という本作を創り上げ、華々しくツアーも行い、アルバム、ツアー共に高評価を得ていたのにも拘らず、脱退後に「Phil Collins(Dr,Vo,Per.フィル・コリンズ)の方が歌が上手いし、僕がいない方がGENESISは良いバンドになる。」というようなコメントを残していたり、GENESISの次作『A Trick of the Tail(トリック・オブ・ザ・テイル)』発表時には「ほら、やっぱり良くなっただろ」的なコメントをしている辺りは、当時のコンプレックスの塊のようなPeter Gabrielの複雑な人間性が垣間見えて、なかなか面白いところではあります。
*脱退理由は、バンドへの不満とか、次のステップへ、という訳ではなく、ライヴやアルバム制作の過密スケジュールの為、産まれたばかりの娘(かなりの難産、しかも出産後も危険な状態が続いていた様です)と奥さんの傍に居ることが出来なくてロック・スターの生活に嫌気が差した、という様なことだったと思います。また、Peter Gabrielタイプのミュージシャンを演ずることに疲れた、という様なコメントも残しているようです。

 『Nursery Cryme(ナーサリー・クライム/怪奇骨董音楽箱)』(1971年)収録の"The Musical Box"、"The Fountain Of Salmacis"、『Foxtrot(フォックストロット)』(1972年)収録の"Watcher Of The Skies"、"Supper's Ready"、『Selling England By The Pound(月影の騎士)』(1973年)収録の"Firth Of Fifth"、"The Cinema Show"というようなキラー・コンテンツが無いため地味な印象を受けるアルバムではありますが、収録曲はバラエティー豊かで良作揃い。コンセプト・アルバムという性質上、きちんと聴こうと思えば集中力を必要としますが、気楽に聴こうと思えば、聴く側を飽きさせない構成、バンドの演奏レベルと楽曲クオリティーの高さから2枚組みという長さを感じさせないアルバムでもあります。個人的には"The Lamb Lies Down On Broadway"、"In The Cage"、"Back In N.Y.C."、"Carpet Crawlers"、"The Chamber Of 32 Doors"、"Lilywhite Lilith"、"The Lamia"、"The Colony Of Slippermen"、"It"辺りはオススメの楽曲です。

 アルバムを順番に聴いていくと前後の曲で曲調が大きく変わる部分が多いのは、前作であまりにも良く出来た楽曲間の流れをピーター・ガブリエルが気に入らず、本作では意識的に全体的な統合性を無くした作りにしたかったことや、ミュージカルやオペラのステージような場面転換(セット・チェンジ)を音楽で表現しようとしたから、などと言われています。そういう意味では発売当時のレコードを裏返すという作業も大きな場面転換的作業であり、LPフォーマットのSide AからSide Bといった間を意識しながら聴くのが正解ではないかと思います。


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ピーガブ期のアルバムで最初に聴いたのがこれでした。タイトルの「眩惑のブロードウェイ」に惹かれてこのアルバムを選んだのですが、一番最初に聴くアルバムとしてはちょっときつかった覚えがあります。今から思うと、初期のジェネシスの集大成というよりはピーター・ガブリエルの総括的なアルバムだったからかもしれません。ピーガブ期のアルバムを聴き込み始めたのは「骨董怪奇音楽箱」を購入してからでした。

良いアルバムなんだけど
>キラー・コンテンツが無いため地味な印象を受けるアルバムではありますが、
このへんが最初に聴くのには辛い部分かもしれませんね。あと、ジェネシスの世界観に馴染んでから聴くアルバムだと思います。

  • hajime
  • 2010年07月21日 22:42

ピーター・ガブリエルのリーゼントの不良少年スタイル、あんまり似合って無いような。ウエスト・サイド・ストーリーを意識してるのかな。

  • taro
  • 2010年07月21日 23:48

聞けば聞くほど味の出るアルバム。
「骨董怪奇音楽箱」からこのアルバムまで、どれも傑作だと思います。
ただ、初期ジェネシスの音楽性として2作目のから「フォックストロット」まで、前作「月影の騎士」からピーター脱退後の「トリック・オブ・ザ・テイル」「静寂の嵐」まで、という流れがあると思うんですが、このアルバムだけ異質な感じはしますね。

  • Bert
  • 2010年07月21日 23:57

>最後は自分探しの旅の果てに同化するというような衝撃的、且つ更に難解な結末
なるほど。今まであんまり意識して聞いてなかったけど、今度しっかり聞いてみよう。

  • kyoko
  • 2010年07月22日 06:35

「Seconds Out」にも収録されている「眩惑のブロードウェイ」や「カーペット・クロウラーズ」が入ってるアルバムですね。曲は好きなんだけど、コンセプト・アルバムの2枚組というと、なかなか手を出し難かったアルバムなんですよねぇ。

>その内容と完成度はThe Who(ザ・フー)の『Tommy』、Pink Floyd(ピンク・フロイド)の『The Wall』等の傑作コンセプト・アルバムと並べてもまったく遜色の無い
そんなに良いんですか?これはちょっと要チェックです。

  • Coo
  • 2010年07月23日 17:11

問題作とか異色作とか言われてますが、実は僕はこのアルバムがピーター在籍中のアルバムでは一番好きなんです。

>聴く人それぞれに様々な情景や色彩を魅せてくれるはずです。
うんうん、正にその通り。イマジネーションが広がります。

  • kogoro
  • 2010年07月24日 09:26

>hajimeさん
>>ジェネシスの世界観に馴染んでから聴くアルバムだと思います。
 確かにその通りですね。
 以前、別の記事でも書いたんですが、私がプログレ期ジェネシスを初めて聴く人にオススメする順番は『眩惑のスーパー・ライヴ』、『月影の騎士』、『フォックストロット』、その後で『怪奇骨董音楽箱(ナーサリー・クライム)』か本作『眩惑のブロードウェイ』という順番です。
*『眩惑のスーパー・ライヴ』からピーガブ期に行かずに『A Trick of the Tail(トリック・オブ・ザ・テイル)』『Wind & Wuthering(静寂の嵐)』というのも良いのですが、やっぱりピーガブ期を経てから『トリック・オブ・ザ・テイル』『静寂の嵐』あたりを聴いた方が面白いかな、と。


>taro
>>ウエスト・サイド・ストーリーとかを意識してるのかな。
どうなんでしょう?ありえるとは思いますが。
でも、イギリス上流社会出身のピーター・ガブリエルがニュー・ヨークの不良少年を演じてるっていうのは面白いですよねぇ。^^


>Bertさん
>>このアルバムだけ異質な感じはしますね。
 同感です。まぁ、コンセプト・アルバムということもあるんでしょうけど、ピーター・ガブリエル全開のアルバムですからねぇ。
 でも、実は前作の『月影の騎士』も、ジャケット手前のベンチで寝ている青年の見た夢の数々、という様な設定があるみたいなので、ある意味コンセプト・アルバムなんですよね。


>kyokoさん
>>今度しっかり聞いてみよう。
 難しいこと考えずに聴いても面白いアルバムなんで、聴き方は人それぞれで良いと思いますよ。
 でも、ピーター・ガブリエルという人は本当に面白い(?)人で、一捻りも二捻りもした物をひっくり返して、底から見えた情景を歌にしてるような人だと思います。


>Cooさん
>>そんなに良いんですか?これはちょっと要チェックです。
 個人的な意見ですよ。でも、自信はあるけど。ただ、馴染むのに『Tommy』などに較べると時間は掛かるかな? ^^♪


>kogoroさん
>>問題作とか異色作とか言われてますが
 ピーター・ゲイブリエルが居た頃のジェネシスというバンドは、有名どころのプログレ・バンドの中では一番馴染むまでに時間が掛かるバンドだと思っているのですが(でも、その音に馴染んじゃうとハマリまくりです)、その中でもこのアルバムは特に良さが分かるまで時間が掛かるアルバムだと思います。私も個人的には『怪奇骨董音楽箱(ナーサリー・クライム)』から『眩惑のブロードウェイ』までは好きなアルバムばかりなんですけど、人には一番にオススメしにくいアルバムなんですよね。

  • axis_009@管理人
  • 2010年07月24日 10:40

TBありがとうございました。わたしはアルバムというよりは、Musical Box と Supper's が好きです。

>cyberbloomさん
こんばんは。

>>Musical Box と Supper's
 私も好きな楽曲です。いずれも長さを感じさせない充実した内容ですね。メロディーも良いし、楽曲の展開、演奏のアイディアも素晴らしい。^^♪

  • axis_009@管理人
  • 2010年07月29日 22:19


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