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2010年07月09日

Selling England By The Pound/GENESIS (ジェネシス)

B00005GOABセリング・イングランド・バイ・ザ・パウンド
ジェネシス
EMIミュージック・ジャパン 1995-11-29

 5人のメンバーが総力を挙げて創り上げた名盤『Foxtrot(フォックストロット)』(1972年)の高評価が、ステージでの演劇性の高いパフォーマンスや文学的で難解な歌詞など、バンドの表現者として人気が集中していたPeter Gabriel(Vo.ピーター・ゲイブリエル)のみに向けられたことに反発した他のメンバー4人が主導権を握って制作した本作『Selling England By The Pound(月影の騎士)』(1973年発表・通算6作目)は、GENESIS(ジェネシス)らしいシニカルな内容と叙情性豊かで英国的な美しいメロディー・ラインはそのままに、前作で完成されたGENESISのスタイルを熟成し、更に演奏面を大幅に充実させた、Peter Gabriel期のGENESISの作品の中でも『Foxtrot』と並んで最高傑作に挙げる人の多いアルバムです。


1. Dancing With The Moonlit Knight
2. I Know What I Like (In Your Wardrobe)
3. Firth Of Fifth
4. More Fool Me
5. The Battle Of Epping Forest
6. After The Ordeal
7. The Cinema Show
8. Aisle Of Plenty

Peter Gabriel - Vo.ピーター・ガブリエル
Tony Banks - Key.トニー・バンクス
Mike Rutherford - B.マイク・ラザフォード
Steve Hackett - G.スティーブ・ハケット
Phil Collins - Dr,Vo,Per.フィル・コリンズ

 この時期のGENESISの傑作群の中でも比較的ポップで聴き易い楽曲が収録された本作『Selling England By The Pound(月影の騎士)』は、その良質なメロディーもさることながら、特筆すべきはPeter Gabriel(Vo.ピーター・ゲイブリエル)を除く楽器隊4人のメンバーが創り上げた素晴らしいインスト・パート。キーボードのTony Banks(Key.トニー・バンクス)が創り上げた音世界に彩を加えるSteve Hackett(G.スティーブ・ハケット)のギター、印象的なベース・ラインで楽曲を引き締めるMike Rutherford(B.マイク・ラザフォード)、そしてある時は歌うように、またある時はダイナミックに楽曲を盛り上げるテクニカルなPhil Collins(Dr,Vo,Per.フィル・コリンズ)のドラム。本作のインスト・パートでの多彩な楽曲アイディア、素晴らしい演奏を聴かされると、前作『Foxtrot(フォックストロット)』はPeter Gabrielの才能によるもの、という世間の評価にメンバーが反発したくなる気持ちも分かりますし、更に言えば『Foxtrot』への楽曲制作、アレンジ、構成等のアイディアにおける貢献度は、Peter Gabrielよりも特にTony Banks、そしてSteve Hackettあたりの方が高かったのであろうと思える程の完成度の高い内容です。
 また、本作は(Peter Gabrielも含めた)メンバー間のバランスが一番良かった時期のアルバムであり、メンバーの誰か(Peter GabrielやTony Banks)が出過ぎることも無く、楽曲制作、演奏内容的にも各メンバーの個性が充分発揮された楽曲揃い。特に本作以降サウンド面で徐々に主導権を握って行く事になるTony Banksが作るキーボード・サウンドで完璧にアレンジされた楽曲群に対して、ギターのSteve Hackettが居場所を失っていきますが、本作ではGENESIS脱退後のソロ活動で「ジェネシス以上にジェネシスらしい」と評されたSteve HackettとTony Banksの均衡が絶妙な形で保たれてるが故に、本作『Selling England By The Pound』は、(GENESIS黄金期と言われる)この時期のメンバー編成における最もGENESISらしい作品だったのではないかと思います。そういう意味では、Peter Gabrielのアルバムへの不満はあるにせよ、メンバー自身が認めるとおり、Peter Gabriel期のアルバムでの最高傑作は本作であると言っても良いのかもしれません。

 前述したような製作過程からTony Banks等4人のメンバーにとっては満足できる内容の傑作アルバムになりましたが、ヴォーカル・パートが大幅に減らされた上、歌詞を書くのが遅かったPeter Gabrielに替わって他のメンバーが歌詞を書いたり、初期GENESISが持っていた色が消されつつある内容にGENESISが普通のロック・バンド(リスナーにとっては充分ジェネシスならではの世界が広がっていると思うのですが)になってしまうという危惧を抱いたPeter Gabrielには納得のいかない作品となり、次のスタジオ・アルバム制作(『The Lamb Lies Down On Broadway/眩惑のブロードウェイ』)においてPeter Gabrielが他のメンバーに反旗を翻し、作品の出来は素晴らしい内容に仕上がったものの、Tony Banks、Steve Hackett等の顰蹙、激怒を呼ぶほどの暴走劇を繰り広げることになります。

 ダイナミックに展開するGENESISならではの静と動の対比が見事な楽曲"Dancing With The Moonlit Knight"。ポップな曲調ながら単なるポップ・ソングに終わらせないジェネシスの面白さを感じさせるシングル・ヒット曲"I Know What I Like"。本作収録の"The Cinema Show"と並ぶ代表曲のひとつ、壮大なシンフォニック・ロック"Firth Of Fifth"。Phil Collinsがメイン・ヴォーカルをとる、装飾を全て取り払った素のGENESISといった感のあるアコースティック・ナンバー"More Fool Me"。Peter Gabrielならではの演劇的要素を持つ前作からの延長線上にある"The Battle Of Epping Forest"。12弦ギターの調べに乗せて歌われる幻想的で美しいメロディー・ラインを持つヴォーカル・パートからTony Banksがプログレッシブ・ロック史上に残る名演を聴かせる後半のインスト・パートへの流れが素晴らしい、GENESISを代表する名曲"The Cinema Show"他。
 個人的にはPeter Gabriel期のアルバムの中で『Foxtrot』と甲乙はつけがたいのですが、長年GENESISを聴いてきて強いて言うなら、やっぱり最後は本作『Selling England By The Pound』に行き着くかな、という感はあります。


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EMIミュージック・ジャパン 1995-11-29


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comments

アタシはピーガブの頃のジェネシスだとこれが一番好きかな。

  • kyoko
  • 2010年07月09日 08:51

これまた名盤ですね。
「怪奇骨董音楽箱」から「幻惑のブロードウェイ」までは、人それぞれ好みはあるだろうけど、どれも快作です。

>やっぱり最後は本作『Selling England By The Pound』に行き着くかな
 僕は前作の『フォックストロット』ですね。

  • Bert
  • 2010年07月09日 16:34

前作の「Foxtrot」も「Nursery Cryme」に較べるとバンドの演奏力が向上してるんですが、このアルバムでは一段と上がってます。スティーブ・ハケットのギターも前作までの今では古臭く感じるファズ・ギターじゃなく、ナチュラルなオーバードライブ・サウンドになって現代的な音質に変わってトニー・バンクスのキーボード・サウンドにマッチしていて非常に聞きやすい音になってます。

axis_009さんは「月影の騎士」がイチオシですか。僕も同じなんですが、「ナーサリー・クライム(怪奇骨董音楽箱)」も捨てがたいなぁ。

  • Hajime
  • 2010年07月09日 20:44

こんばんは。
シネマ・ショウ良いですね。気に入りました。
・・・しかし、ピーター・ガブリエルのステージング、何時見てもなんだか奇妙ですね。(笑)

  • taro
  • 2010年07月09日 21:15

こんばんは。ブログ再開されたんですね。しかも記事が沢山増えてるし。^^

ジェネシスではこのアルバムが一番ですね。80年代のポップなジェネシスが好きな人でもいけると思います。中でも特にザ・シネマ・ショウがいいですねぇ。トニー・バンクス最高です。
キーボードと言うとプログレだとキース・エマーソンとかリック。ウェイクマン、ロックだとジョン・ロードなどが話題になることが多いけど、トニー・バンクスはイマイチ知名度が低いのは寂しいですね。

  • kogoro
  • 2010年07月09日 21:48

>Kyokoさん、Bertさん
 ピーター・ガブリエル在籍中のアルバムだと、私も本作が1番好きなアルバムです。といっても、『ナーサリー・クライム』から『眩惑のブロードウェイ』まで、どれも好きなアルバムばかりですし、特に『フォックストロット』と『月影の騎士』は甲乙つけがたい作品です。^^♪


>Hajimeさん
>>非常に聞きやすい音になってます。
 バンドの演奏レベルの向上も大きいとは思いますが、それと合わせてこの時期の録音技術の進歩というのも大きいのではないかと思ってます。

>>「ナーサリー・クライム(怪奇骨董音楽箱)」も捨てがたいなぁ。
 確かにそうですよねぇ。「ミュージカル・ボックス」などは大好きな楽曲です。


>taroさん
>>シネマ・ショウ良いですね。気に入りました。
 『Seconds Out』のフィル・コリンズのヴァージョンも良いですが、『Selling England By The Pound』のピーター・ゲイブリエルのヴァージョンも良いですよ。聴き比べてみるのも一興です。^^


>kogoroさん
>>こんばんは。ブログ再開されたんですね。
 そうなんですよ。本当を言うと止めてたつもりは無いんですが、なんとなく放置していたら2年近くたってしまいました。^^;

>トニー・バンクスはイマイチ知名度が低いのは寂しいですね。
 プログレ・ファンには御馴染みの名前だと思いますが、一般のロック・ファンにももう少し評価されるといいんですけど、派手なスター・プレイヤーっていう感じじゃないですからね。

  • axis_009@管理人
  • 2010年07月11日 14:29


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