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2008年04月24日

'Round About Midnight/MILES DAVIS (マイルス・デイヴィス)

B00005B58W'Round About Midnight
Miles Davis
Sony Jazz 2001-04-18

 ジャズの名門レーベルのひとつ、Prestige(プレスティッジ)から大手Columbia(コロンビア/CBS)に移籍したMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)が1957年に発表した移籍第1弾。Miles Davisの知名度を飛躍的に高めたアルバムであり、遂に登場したJohn Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)等を擁した"黄金のクインテット"と共に、極めて完成度の高い洗練されたアレンジで無駄な音を一切排除して創り上げた、Miles Davisの美学が結実したモダン・ジャズを代表する名盤です。


1. 'Round Midnight
2. Ah-Leu-Cha
3. All of You
4. Bye Bye Blackbird
5. Tadd's Delight
6. Dear Old Stockholm

Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
John Coltrane -tenor sax (ジョン・コルトレーン)
Red Garland -piano (レッド・ガーランド)
Paul Chambers -bass (ポール・チェンバース)
Philly Joe Jones -Drums (フィリー・ジョー・ジョーンズ)

*trk.2 - 1955年10月26日録音
*trk.4-6 - 1956年 6月 5日録音
*trk.1,3 - 1956年 9月10日録音

 演奏者全員の機能的な結びつきが重要視されるハード・バップという音楽の性質上、パーマネントなグループ結成の必要性を感じていたMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)は無名ながら才能溢れる若手ミュージシャンを集めてレギュラー・コンボを結成。ここにMiles Davis、John Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)、Red Garland(p.レッド・ガーランド)、Paul Chambers(b.ポール・チェンバース)、Philly Joe Jones(ds.フィリー・ジョー・ジョーンズ)、後に"黄金のクインテット"と呼ばれることになるThe Original Quintet/First Great Quintetが遂に誕生します。
 とはいっても、数年後にSonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)と並ぶサックスの巨匠としてジャズ界のビッグ・ネームとなるJohn Coltraneなどは、Miles Davisに個性と可能性を認められての参加とはいえ、Miles Davisが熱望していたSonny Rollinsに断られた為の代役に過ぎず、この時点では経験も演奏も未熟。時折キラリと光るプレイを聴かせる、大きな才能を秘めた若手プレイヤーと言った感じで、その反面、下手をするとウィーク・ポイントにも成りかねない存在。全盛期のJohn Coltraneの代名詞となる"シーツ・オブ・サウンド"には程遠い荒々しいサウンドでアドリブにも迷いが感じられるプレイも多く、この時期のJohn Coltraneをどう聴くかによってクインテットへの評価が変わると言っても過言ではありません。

Miles Davis & John Coltrane しかし、The Original QuintetでのJohn Coltraneに対して否定的な意見も多い中、後年"黄金のクインテット"としてジャズの歴史に名を残したグループだけあって、Miles Davisの強烈なリーダー・シップに牽引されて数々のアルバムに残した演奏は悪くても平均点以上。例えJohn Coltraneがメンバーが作り上げてきた曲の雰囲気をぶち壊すような豪快な節回しでアドリブをスタートさせてしまったとしても(流石に本作『'Round About Midnight』のように作り込まれたアルバムでは大きな破状ありませんし、この時期のJohn Coltraneの演奏としては奇跡的な名演揃い)、それらを全て含めて、このグループの味であり、魅力であったのではないでしょうか。また、John Coltraneのテナー・サックスのトーンとMiles Davisのトランペットの相性は絶品。Miles Davisのトランペットをより際立たせ、より輝かせるそのトーンは、周りからの不評、そしてMiles Davis本人も「アイツは下手だ」と言いながら、John Coltraneを使い続けた大きな理由の1つではないかと思われ、そのプレイに関しても、何とかグループのサウンドを壊さないように試行錯誤しながら必死になって演奏しているJohn Coltraneには、後年のプレイとの対比も含め、未完成故の面白さがあると思っています。

 Columbia(コロンビア/CBS)移籍を視野に入れ、Prestige(プレスティッジ)在籍中にColumbiaのために行った、グループでの初レコーディングとなる1955年10月26日のセッションでは各メンバーもMiles Davisの意図を測りかねて戸惑いがあったのか、4曲レコーディングして、そのうち本作には"Ah-Leu-Cha"のみの収録になっています。(後年、ボーナス・トラック等で全ての録音曲が発表済み。)
 しかし、レギュラー・コンボの強み、同じメンバーでのライブ、Prestigeでの録音セッションなどを重ねるうち、Miles Davisの意図がグループに浸透して徐々にMiles Davisの示した方向性がハッキリと表現されるようになり、翌年6月のセッションでの3曲("Bye Bye Blackbird"、"Tadd's Delight"、"Dear Old Stockholm")、初レコーディングから約1年後のセッションでの2曲("'Round Midnight"、"All of You")と、これまでの様にレコーディングのたびに集められたメンバーとの録音では到達できなかった、Miles Davisの意向をより素晴らしいコンビネーションで聴かせる、"黄金のクインテット"と呼ばれるに相応しい演奏を繰り広げるグループへと成長していきます。また、名門とはいえ、ジャズ・ファン向けのレーベルに過ぎなかったPrestigeからではなく、一般の音楽ファンを多く抱えたColumbiaからの発売(ある意味メジャー・デビュー?)ということを考慮し、ジャズ・ファンのみを対象にした音楽ではなく、一般の音楽ファンにも聴きやすい音楽を作る必要性を感じたMiles Davisが、Prestigeとの契約上の問題でColumbiaからは直ぐにアルバムを発売できなかったという事情もあり、連日のライブによる演奏の熟成に加え、長い準備期間をかけて予めアレンジ等をしっかり煮詰めて録音に臨んでいたためか、細部にわたってMiles Davisの指示の行き届いた非常に完成度の高いアルバムに仕上がっており、大手Columbiaからの1作目というMiles Davisの気合が充分に伝わる傑作になっています。

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comments

>John Coltraneのテナー・サックスのトーンとMiles Davisのトランペットの相性は絶品。
 正にマイルスの引き立て役としては、コルトレーンの音色は相性が良いです。マイルスのトランペットが際立つというか。
 コルトレーンにしろ、ガーランドにしろ、マイルスのメンバー選びのセンスは抜群に良いですね。一つ一つの音だけでなくグループ全体でどういう音がなっているか、ということを考えて選んでいるところが凄い。1トランペッターという枠を超えて、プロデューサー的な感覚を早くから持っていたんでしょうね。

  • bert
  • 2008年04月29日 10:30

恐ろしいお方。ジャズにも詳しいのですね。あっしも時々取り上げるのですが、感性と知識のなさは隠しきれません。

この当時のメンバーは今から考えてみると誰もかれもがジャズ・ジャイアントだったからどう組み合わさっても興味深い素晴らしい音楽が出来るのですよね。

bertさん
>>マイルスのメンバー選びのセンス
 この後もマイルスのバンドからは多くの大物ミュージシャンが誕生するし、70年代以降のジャズ、フュージョンはマイルス・バンド卒業生に牛耳られていたといっても良いぐらいの状況ですもんね。

ぷくちゃん
>>ジャズにも詳しいのですね
 実は浅く狭くなんですよ。でも、好きなアルバムを何年も聞き続けていると、知らぬ間にそのアルバムのエピソードとか予備知識とか、いろいろ蓄積されてきちゃうもんですね。

 このアルバムの頃から音源の編集作業、テープの切り貼りなどが行われるようになった、という話も聞いたことがありますが、とはいえ、当時のミュージシャンの演奏能力の高さは素晴らしすぎます。

  • axis_009@管理人
  • 2008年05月06日 10:18

こんばんは
このアルバムは本当に完成度の高いアルバムです。
マラソン・セッションも好きなんですが、同時期に録音されたのに、全く雰囲気が違うというのが面白い。
マラソン・セッションとラウンド・アバウト・ミッドナイトのどちらが好きかと言われたら、甲乙付けがたいんですけど、一番有名な「カインド・オブ・ブルー」より、この時期の録音の方が好みです。

  • taku
  • 2008年05月09日 21:56


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