April 3, 2005
Relaxin' with the Miles Davis Quintet/MILES DAVIS (マイルス・デイヴィス・クインテット)
![]() | Relaxin' Miles Davis Quintet Victor 2006-03-21 |
[試聴]iTunes Music Store - The Miles Davis Quintet
Miles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)が1950年中盤から1960年にかけてのモダン・ジャズ黄金期に残したハード・バップの名盤『Relaxin' with the Miles Davis Quintet(リラクシン)』。
所属していたPrestige(プレスティッジ)から新たに専属契約を行った大手Columbia(コロンビア/CBS)に速やかに移籍するため、Prestigeに残っている契約を処理する目的で第1期"黄金のクインテット"(First Great Quintet)、John Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)、Red Garland(p.レッド・ガーランド
)、Paul Chambers(b.ポール・チェンバース
)、Philly Joe Jones(ds.フィリー・ジョー・ジョーンズ
)等と共に2日間(1956年5月と10月)で4枚分のレコーディングを行った、通称"マラソン・セッション"として有名な"ing4部作"の1枚です。(1956年録音/1958年発表)
PrestigeはColumbia移籍後のMiles Davisの人気上昇を見越して音源を温存。4枚のアルバムを1957年から1961年にかけて4枚のアルバムに分けて発売しています。
*後の3枚は『Cookin'(クッキン)』(1957年発表)、『Workin'(ワーキン)』(1960年発表)、『Steamin'(スティーミン)』(1961年発表)
1.If I Were A Bell
2.You're My Everything
3.I Could Write A Book
4.Oleo
5.It Could Happen To You
6.Woody'n You
Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
John Coltrane -tenor sax (ジョン・コルトレーン)
Red Garland -piano (レッド・ガーランド)
Paul Chambers -bass (ポール・チェンバース)
Philly Joe Jones -Drums (フィリー・ジョー・ジョーンズ)
*trk.1-4 - 1956年10月26日録音
*trk.5-6 - 1956年5月11日録音
2日間で4枚分のレコーディングとはいえ(その上ほとんどの曲がワンテイク)、毎夜行われるライブ、セッションで鍛え上げられ、完成されたThe Miles Davis Quintet(マイルス・デイヴィス・クインテット)の演奏故、発売された4枚すべてが傑作という奇跡的なセッションです。大量生産方式のPrestigeらしく、テープを回しっ放しで次々と録音されたため、曲間でのスタジオ内の話し声などもそのまま収録されており、これだけの名演を次から次へと演奏していながら、かなりリラックスしたムードの中で録音されていたことが伺えます。
"ing4部作"は、Columbia移籍第1弾『'Round About Midnight(ラウンド・アバウト・ミッドナイト)』(1957年発表)と同年(1956年)に録音されていますが、その作りは意識的に変えられており、『'Round About Midnight』は一般の音楽ファンを対象とした為、それを考慮した作り込んだ完成度の高いアルバムに仕上げています。それに対して"ing4部作"では、これほどの名演揃いでもMiles Davisにとっては移籍処理のための「やっつけ仕事」だったのかもしれませんが、1955年のThe Miles Davis Quintet結成以来、連日のライブで演奏してきた楽曲の数々を熱気そのままにパッケージした内容になっており、その為"ing4部作"はジャズという音楽の楽しさが詰まったアルバムになっています。一般的な評価での名盤度は『'Round About Midnight』に譲るとしても、こういった部分が"ing4部作"がいつまでもジャズ・ファンに愛される理由かもしれません。
"ing4部作"全てに言える事ですが、余り知られていない良曲を見つけ出してレパートリーに加えるMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)の選曲のセンスも絶品。The Miles Davis Quintetの名演のおかげで、ここから多くのミュージシャンに取り上げられるスタンダードに育って行った楽曲が数多く収録されています。(Sonny Rollins/ts.ソニー・ロリンズの代表曲"Oleo"、"Airegin"がレパートリーに含まれているのは、Sonny Rollinsの参加を想定していた名残か?)
また、この時点でMiles Davisのミュート・トランペット奏法も完成の域に入っており、中音域での厚みのある音色を活かしながら、高音域の金属的な哀愁感のある響きなど、多彩なトーンを使っての表情豊かで歌心溢れるプレイは見事の一言。特に本作『Relaxin'』は1曲を除いて全てミュート・トランペットによる演奏を収録しており、Miles Davisのミュート・トランペットを心行くまで堪能できるアルバムです。個人的にもミュート・トランペットの魅力を教えてもらったアルバムでもあり、内容的にも聴き込むに良し、BGMに良しと、何かのときについつい手が伸びてしまうアルバムでもあります。
軽やかな鐘の音から軽快にスタートする"If I Were A Bell"から"You're My Everything"、"I Could Write A Book"と続く冒頭3曲でのThe Miles Davis Quintetの演奏は、聴く者をリラックスした至福の一時に誘い、複雑なテーマをクールに決めるSonny Rollins作曲の"Oleo"、そして再び軽快なMiles Davisの熟成されたミュート・トランペットで聴かせる"It Could Happen To You"、ビ・バップ時代の巨匠、Dizzy Gillespie(tp.ディジー・ガレスピー)のオリジナル曲をMiles Davisが創り上げたハード・バップ・スタイルで自信たっぷりに演奏する"Woody'n You"。アルバム全体の流れも良く、非常に聴きやすいアルバムではないかと思います。
1960年代のジャズ・シーンにJohn Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)時代を築くことになるJohn Coltraneの"ing4部作"における、未だ自らのプレイが確立できていない上、Miles Davisの意図を図りかねて試行錯誤中の暴走と迷走加減、そして5月と10月の録音の間での成長(とはいっても、John Coltraneの本格的な開花はグループ休止中の1957年にThelonious Monk/p.セロニアス・モンクのセッションに参加した頃から)といった部分も聴き所です。
![]() | Cookin' With the Miles Davis Quintet Miles Davis Prestige 2007-02-06 |
1. My Funny Valentine
2. Blues by Five
3. Airegin
4. Tune Up/When the Lights Are Low
*1956年10月26日録音
Red Garland(p.レッド・ガーランド)の哀愁を帯びた甘いピアノとMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)のミュートによるリリカルな名演で聴かせる超有名曲"My Funny Valentine"を収録した人気作。
この1曲を聴くためだけにアルバムをコレクションしても良いほどの名演、"My Funny Valentine"(歌モノの下手なJohn Coltrane/ts.ジョン・コルトレーンが偶然なのか、意識的になのか演奏から外されているのも面白いところ)の影に隠れがちですが、その他の収録曲もバラードからミディアム、ハイテンポ・ナンバーまでバランスよく収録されており、Miles Davisと最強のリズム・セクションに成長したRed Garland、Paul Chambers(b.ポール・チェンバース)、Philly Joe Jones(ds.フィリー・ジョー・ジョーンズ)、そしてJohn Coltraneが繰り広げる、The Original Quintet/First Great Quintetたる所以が充分に楽しめる演奏揃い。"ing4部作"から1枚選ぶなら『Relaxin'』か本作『Cookin'』がオススメです。(といっても、1枚気に入ってしまえば、結局4枚とも揃えたくなってしまうと思いますが。)
上記『Relaxin'』に収録された"Oleo"同様、本作『Cookin'』にもSonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)の代表曲"Airegin"(逆さから綴ると「Nigeria」)が収録されていますが、Sonny Rollinsのオリジナルと同じサックス奏者のJohn Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)のアプローチの違いを聴き比べてみるのも面白いですし、Miles DavisとSonny Rollinsが共演した『Bags' Groove(バグス・グルーヴ)』(1954年録音・1957年発表)に収録された、自らのオリジナル曲ながら、まだ楽曲をモノに出来ていない時点でのSonny Rollinsのプレイと比較してみるのも一興。(1957年発表)
![]() | Workin' Miles Davis Quintet Prestige 2006-09-12 |
1. It Never Entered My Mind
2. Four
3. In Your Own Sweet Way
4. Theme [Take 1]
5. Trane's Blues
6. Ahmad's Blues
7. Half Nelson
8. Theme [Take 2]
*trk.1-6,8 - 1956年5月11日録音
*trk.7 - 1956年10月26日録音
Miles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)がBlue Noteに残した『Miles Davis Volume 1』での演奏も充分に素晴らしい演奏でしたが、それすらを上回る名演を聴かせる"It Never Entered My Mind"の再演。Miles Davisのミュート・トランペットの表現力の進化も見逃せませんが、"黄金のクインテット"と呼ばれたマイルス・コンボの凄みを感じさせる演奏でもあります。特にRed Garland(p.レッド・ガーランド)のソロは、正にRed Garlandならではの素晴らしい演奏。せっかくのバラードを台無しにしかねないJohn Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)が、ここでもソロを吹かせてもらえないのはご愛嬌。
![]() | Steamin' With the Miles Davis Quintet Miles Davis Quintet Universal Japan 2007-08-07 |
1. Surrey with the Fringe on Top
2. Salt Peanuts
3. Something I Dreamed Last Night
4. Diane
5. Well, You Needn't
6. When I Fall in Love
*trk.1-4,6 - 1956年5月11日録音
*trk.5 - 1956年10月26日録音
"ing4部作"は全て名演揃いであり、本作『Steamin'』も素晴らしい演奏が収録されていますが、2曲目に長いドラム・ソロの入った"Salt Peanuts"を収録しているため、アルバムのバランスが悪く感じられるのが勿体無いところ。(この手の曲はアルバム後半の方が良かったのでは?)
Miles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)の泣きのミュート・トランペットが堪能できる"When I Fall in Love"は必聴。
■Art Pepper (アート・ペッパー)
![]() | Art Pepper Meets the Rhythm Section Art Pepper Original Jazz Classics 1991-07-01 |
1. You'd Be So Nice to Come Home To
2. Red Pepper Blues
3. Imagination
4. Waltz Me Blues
5. Straight Life
6. Jazz Me Blues
7. Tin Tin Deo
8. Star Eyes
9. Birk's Works
ウエスト・コースト・ジャズを代表する、白人アルト・サックス奏者Art Pepper(as.アート・ペッパー)が、The Miles Davis Quintet(マイルス・デイヴィス・クインテット)が誇る最強のリズム・セクション、Red Garland(p.レッド・ガーランド)、Paul Chambers(b.ポール・チェンバース
)、Philly Joe Jones(ds.フィリー・ジョー・ジョーンズ
)を迎えて録音した代表作。(1957年発表)
1957年1月、Art Pepperの所属するContemporary Rcordsのプロデューサーが、ロサンゼルスのジャズ・クラブで3週間の公演中だった人気絶頂のThe Miles Davis Quintetからリズム・セクションを借りて、ロサンゼルス滞在中にArt Pepperとの共演盤をレコーディングすることを思い立ち、Miles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)に許可を得て実現したのが本作『Art Pepper Meets the Rhythm Section』です。
ウエスト・コースト・ジャズの典型的な白人ミュージシャンであるArt Pepperのクールで洗練されたジャズと、ハード・バップ・ジャズを代表するホットな黒人リズム・セクションとの、ある意味相反する音楽の共演なのですが、意外にも互いの演奏が破状する事無くスムーズに融合。企画物のような急遽行われたレコーディングの割には、事前のリハーサル、楽曲の打ち合わせがきちんと行われたことが窺われ、レギュラー・コンボと見違うばかりの演奏を聴かせてくれます。また、乾いた抜けの良い音の中で時に哀愁ある湿り気を感じさせるArt Pepper特有のアルト・サックスの響きを黒人特有の粘り気のあるリズム・セクションの演奏がより際立たせる効果を挙げています。艶のある色気たっぷりのアルト・サックスの音色を聴くならこのアルバムです。
(2008/05/01 改訂)
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- by axis_009
- at 05:14
- Comments (11)
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comments
おじゃまします。こんにちわ。マイルスデイビス!最高ですね。音楽家としては最高峰じゃないでしょうか。大好きですよ。
私も「ラウンドアバウトミッドナイト」はとくに好きです。
昔、マイルスじゃないですが、「ラウンドアバウトミッドナイト」てゆう映画でデクスタ−ゴ−ドンが出演演奏してた「ラウンド〜」がはじめて聞いた「〜アバウトミッドナイト」でした。
Smokyさん、こんにちは。
マイルスは時期によって音楽のスタイルが違うので(進化している!)、年代によって1枚ずつ好きなアルバムを選んで(1枚だけ選ぶのが大変ですが)取り上げていこうかと思ってます。
こちらにもお邪魔します
以前拙ブログの「一家に一枚」というコーナーで取り上げましたのでTBさせていただきました
4部作どれも甲乙つけがたいですが、個人的な曲の好みでRelaxin'が一番です
「You are my everything」は究極のバラードだと思います
>francofrehleyさん
一般的には「クッキン」挙げる人が多いみたいですが、私も「リラクシン」のほうが好みです。1曲目の「If I Were A Bell」の明るく朗らか(?)な感じが良いんですよ。聴きだすとそのままアルバムの最後まで心地よい時間が続きます。
また、寄って見てください。こちらからもお邪魔しますね。
はじめまして。トラバからきました。素敵なブログですね!とってもみやすいです。マイルスの情報もいっぱいだし!ブログ初心者の私、参考にさせていただきます☆ありがとうございました♪
>nokkuru15さん
私は基本的にはロック好きなんですが、ジャズのアルバムにも好きなものが多いので少しずつ掲載していこうかと思ってますので、今後ともよろしくお願いします。
ブログをやってみたくて、マイルスが亡くなった頃に止んだ、ジャズLPをブログ・ネタにしています。収集した時期がロックの影響の強いころです。音源はMP3へ、ジャケットはScanしJPEGへと手間がかかり、面倒な解説は省略しています。理屈は不要で量で聴いているようです。マイルスは、皆が沢山もっているし、なんか気恥ずかしいのですが、きょうまでで2つ記事にしています。
コメントとトラックバック有難うございます。
こんばんは。
私がブログで書いた、マイルス・デイビスの自叙伝なんですが、ホントに面白い本です。
機会があったら読んでみることをオススメします。
>ものずき烏さん
コメントありがとうございます。
>皆が沢山もっているし
確かにその通りですね。私も勢いで書いてしまわないと書きにくいミュージシャンの一人です。
また、寄って見てください。宜しくお願いします。
>sacd_reviewさん
色々と無茶をやっていそうで面白そうですね。それに最先端を走ってた人だし。。。実は前から読んでみたいと思いながら未購入のままなんですよ。(^^;
ジャズのこの手のものだと、本では無いのですが、映画「バード」もかなり面白かったですね。
僕もあの4枚の中では「リラクシン」が一番ですね。よく紹介されているのは「クッキン」だけど。
ロックを主に扱っておられるみたいですが、僕と趣味が近いのかな、なんて思いました。(^^)
またジャズのアルバムも扱ってください。楽しみにしてます。
リラクシン、やっぱりいいですよね(^^)。
ほんわかします。