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May 14, 2008

Milestones/MILES DAVIS (マイルス・デイヴィス)

MilestonesMilestones
Miles Davis
Sony/BMG Japan 2001-04-18

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 メンバーにJulian "Cannonball" Adderley(as.キャノンボール・アダレイ)を加えてセクステット(六重奏団)となったMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)のコンボが、より重厚感を増したサウンドで次世代への革新的なアイディアを盛り込んで繰り広げる、ジャズの新たな世界への序章『Milestones』。(1958年発表)


1. Dr. Jackle
2. Sid's Ahead
3. Two Bass Hit
4. Milestones
5. Billy Boy
6. Straight, No Chaser

Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
Julian"Cannonball"Adderley -alt sax (キャノンボール・アダレイ)
John Coltrane -tenor sax (ジョン・コルトレーン)
Red Garland -piano (レッド・ガーランド)
Paul Chambers -bass (ポール・チェンバース)
Philly Joe Jones -Drums (フィリー・ジョー・ジョーンズ)

 Miles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)が1955年のレギュラー・コンボ結成の際に、Sonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)の次の候補に考えていたサックス奏者、Cannonball Adderley(as.キャノンボール・アダレイ)が(最終的にはJohn Coltraneが参加)、マイルス・コンボ結成から3年後の1958年、最もモダンでホットなハード・バップ・コンボに成長していたThe Miles Davis Quintetに参加。6人編成となり、トランペット、アルト、テナーの3管となったグループのサウンドは必然的に重厚感を増し、Cannonball Adderleyの溌剌としたブルージーなプレイはグループの演奏に幅を与え、Miles Davisの更に研ぎ澄まされた演奏、そして自らのスタイルを確立させたJohn Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)の自信溢れる好プレイも含めて、ハード・バップ史上最高の演奏を聴かせてくれるアルバムです。

 フロントの3人がアグレッシブなアドリブを展開するアップ・テンポのブルース・ナンバー"Dr. Jackle"。1954年にBLUE NOTEで録音したスロー・ブルース"Weirdo"(『Miles Davis Volume 1』収録)の再演"Sid's Ahead"(録音中にRed GarlandがMiles Davisと喧嘩をしてスタジオを出てしまったため、同曲でのピアノはMiles Davisが演奏)。緻密なアレンジ、壮絶なアドリブの応酬とPhilly Joe Jones(ds.フィリー・ジョー・ジョーンズ)のドライブ感たっぷりのドラムで聴かせる"Two Bass Hit"。モード・ジャズの名盤『Kind of Blue』に繋がるモード手法を取り入れたスウィンギーで軽快なタイトル・ナンバー"Milestones"。Red Garland(p.レッド・ガーランド)が"Milestones"で消化しきれなかったモード手法の憂さを晴らすかのようにピアノ・トリオでハード・バップ・スタイルの名演を聴かせる、"Milestones"と並ぶ注目曲の一つ"Billy Boy"。(ここでのRed Garlandの演奏が気に入った人はRed Garland Trio『Groovy』も必聴。)そして再びブルース・ナンバー、Thelonious Monk(p.セロニアス・モンク)作の"Straight, No Chaser"。
 当時のMiles Davisが革新的なアイディアを盛り込む素材としてブルースを好んでいた事から("Billy Boy"を除いて)ブルース・セッションで占められたアルバムです。

 本作『Milestones』でハード・バップ・スタイルでの演奏を極めたThe Miles Davis sextet(マイルス・デイヴィス・セクステット)ですが、ハード・バップ・スタイルの演奏では冴えた演奏を聴かせるものの、Miles Davisが新たに目指したモード手法を取り入れた"Milestones"では、元々理解しようとしていなかったのか、それとも理解し切れなかったのかは分かりませんが、未消化のプレイに終始していたピアニストのRed Garland、そしてドラムのPhilly Joe Jonesは本作を最後にマイルスのコンボを脱退。ハード・バップ最強のリズムセクションは崩壊してしまいますが、Miles Davisは新たにBill Evans(p.ビル・エヴァンス)、Jimmy Cobb(ds.ジミー・コブ)を参加させて、自らが目指す次世代ジャズへの体制作りを完成、遂に歴史的名盤『Kind of Blue』の録音メンバーが揃うことになります。


Sonny Clark (ソニー・クラーク)

Cool Struttin'Cool Struttin'
Sonny Clark
Blue Note 1999-04-20

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Sonny Clark [試聴]iTunes Music Store - Sonny Clark


1. Cool Struttin'
2. Blue Minor
3. Sippin' At Bells
4. Deep Night

Sonny Clark -piano (ソニー・クラーク)
Arthur Stewart Farmer -trumpet (アート・ファーマー)
Jackie McLean -alt sax (ジャッキー・マクレーン)
Paul Chambers -bass (ポール・チェンバース)
Philly Joe Jones -Drums (フィリー・ジョー・ジョーンズ)

 本国アメリカのジャズ・シーンでの無名振りに較べると日本での人気が異常なほど高かった日本人好みのジャズ・ピアニスト、Sonny Clark(p.ソニー・クラーク)がハード・バップが熟成して絶頂期を迎えた1958年に発表した最高傑作。印象的なジャケットと合わせて、日本のジャズ・ファンなら誰もが知っている超有名盤です。
 フロントに実力派、Arthur Farmer(tp.アート・ファーマー)、Jackie McLean(as.ジャッキー・マクレーン)の2管、リズム・セクションにはThe Miles Davis Quintet(マイルス・デイヴィス・クインテット)の最強のリズム・セクションとして名を馳せ、多くのセッションに呼ばれる人気ミュージシャンとなっていたPaul Chambers(b.ポール・チェンバース)、Philly Joe Jones(ds.フィリー・ジョー・ジョーンズ)を迎えた豪華クインテット編成。

 スロー・ブルースの名セッション、Sonny Clarkの代表曲のひとつ"Cool Struttin'"。Sonny Clarkが優れた作曲家であったことを知らしめると共にJackie McLeanの泣きの名演で聴かせるブルージーな名曲"Blue Minor"。Sonny ClarkのBud Powell(p.バド・パウエル)からの影響を感じさせつつ、軽快に疾走するビ・バップ・スタイルの演奏"Sippin' At Bells"。そしてラストに収録された、Sonny Clarkが奏でる哀愁溢れるテーマが心地良い"Deep Night"。ファンキーなフロント2管とダイナミックなリズム・セクションをSonny Clarkがクールにコントロールして創り上げた、全4曲40分弱に詰め込まれたSonny Clarkの美学の結晶。(現在はボーナス・トラックとして2曲追加されています。)

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April 24, 2008

'Round About Midnight/MILES DAVIS (マイルス・デイヴィス)

'Round About Midnight'Round About Midnight
Miles Davis
Sony Jazz 2001-04-18

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 ジャズの名門レーベルのひとつ、Prestige(プレスティッジ)から大手Columbia(コロンビア/CBS)に移籍したMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)が1957年に発表した移籍第1弾。Miles Davisの知名度を飛躍的に高めたアルバムであり、遂に登場したJohn Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)等を擁した"黄金のクインテット"と共に、極めて完成度の高い洗練されたアレンジで無駄な音を一切排除して創り上げた、Miles Davisの美学が結実したモダン・ジャズを代表する名盤です。


1. 'Round Midnight
2. Ah-Leu-Cha
3. All of You
4. Bye Bye Blackbird
5. Tadd's Delight
6. Dear Old Stockholm

Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
John Coltrane -tenor sax (ジョン・コルトレーン)
Red Garland -piano (レッド・ガーランド)
Paul Chambers -bass (ポール・チェンバース)
Philly Joe Jones -Drums (フィリー・ジョー・ジョーンズ)

*trk.2 - 1955年10月26日録音
*trk.4-6 - 1956年 6月 5日録音
*trk.1,3 - 1956年 9月10日録音

 演奏者全員の機能的な結びつきが重要視されるハード・バップという音楽の性質上、パーマネントなグループ結成の必要性を感じていたMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)は無名ながら才能溢れる若手ミュージシャンを集めてレギュラー・コンボを結成。ここにMiles Davis、John Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)、Red Garland(p.レッド・ガーランド)、Paul Chambers(b.ポール・チェンバース)、Philly Joe Jones(ds.フィリー・ジョー・ジョーンズ)、後に"黄金のクインテット"と呼ばれることになるThe Original Quintet/First Great Quintetが遂に誕生します。
 とはいっても、数年後にSonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)と並ぶサックスの巨匠としてジャズ界のビッグ・ネームとなるJohn Coltraneなどは、Miles Davisに個性と可能性を認められての参加とはいえ、Miles Davisが熱望していたSonny Rollinsに断られた為の代役に過ぎず、この時点では経験も演奏も未熟。時折キラリと光るプレイを聴かせる、大きな才能を秘めた若手プレイヤーと言った感じで、その反面、下手をするとウィーク・ポイントにも成りかねない存在。全盛期のJohn Coltraneの代名詞となる"シーツ・オブ・サウンド"には程遠い荒々しいサウンドでアドリブにも迷いが感じられるプレイも多く、この時期のJohn Coltraneをどう聴くかによってクインテットへの評価が変わると言っても過言ではありません。

Miles Davis & John Coltrane しかし、The Original QuintetでのJohn Coltraneに対して否定的な意見も多い中、後年"黄金のクインテット"としてジャズの歴史に名を残したグループだけあって、Miles Davisの強烈なリーダー・シップに牽引されて数々のアルバムに残した演奏は悪くても平均点以上。例えJohn Coltraneがメンバーが作り上げてきた曲の雰囲気をぶち壊すような豪快な節回しでアドリブをスタートさせてしまったとしても(流石に本作『'Round About Midnight』のように作り込まれたアルバムでは大きな破状ありませんし、この時期のJohn Coltraneの演奏としては奇跡的な名演揃い)、それらを全て含めて、このグループの味であり、魅力であったのではないでしょうか。また、John Coltraneのテナー・サックスのトーンとMiles Davisのトランペットの相性は絶品。Miles Davisのトランペットをより際立たせ、より輝かせるそのトーンは、周りからの不評、そしてMiles Davis本人も「アイツは下手だ」と言いながら、John Coltraneを使い続けた大きな理由の1つではないかと思われ、そのプレイに関しても、何とかグループのサウンドを壊さないように試行錯誤しながら必死になって演奏しているJohn Coltraneには、後年のプレイとの対比も含め、未完成故の面白さがあると思っています。

 Columbia(コロンビア/CBS)移籍を視野に入れ、Prestige(プレスティッジ)在籍中にColumbiaのために行った、グループでの初レコーディングとなる1955年10月26日のセッションでは各メンバーもMiles Davisの意図を測りかねて戸惑いがあったのか、4曲レコーディングして、そのうち本作には"Ah-Leu-Cha"のみの収録になっています。(後年、ボーナス・トラック等で全ての録音曲が発表済み。)
 しかし、レギュラー・コンボの強み、同じメンバーでのライブ、Prestigeでの録音セッションなどを重ねるうち、Miles Davisの意図がグループに浸透して徐々にMiles Davisの示した方向性がハッキリと表現されるようになり、翌年6月のセッションでの3曲("Bye Bye Blackbird"、"Tadd's Delight"、"Dear Old Stockholm")、初レコーディングから約1年後のセッションでの2曲("'Round Midnight"、"All of You")と、これまでの様にレコーディングのたびに集められたメンバーとの録音では到達できなかった、Miles Davisの意向をより素晴らしいコンビネーションで聴かせる、"黄金のクインテット"と呼ばれるに相応しい演奏を繰り広げるグループへと成長していきます。また、名門とはいえ、ジャズ・ファン向けのレーベルに過ぎなかったPrestigeからではなく、一般の音楽ファンを多く抱えたColumbiaからの発売(ある意味メジャー・デビュー?)ということを考慮し、ジャズ・ファンのみを対象にした音楽ではなく、一般の音楽ファンにも聴きやすい音楽を作る必要性を感じたMiles Davisが、Prestigeとの契約上の問題でColumbiaからは直ぐにアルバムを発売できなかったという事情もあり、連日のライブによる演奏の熟成に加え、長い準備期間をかけて予めアレンジ等をしっかり煮詰めて録音に臨んでいたためか、細部にわたってMiles Davisの指示の行き届いた非常に完成度の高いアルバムに仕上がっており、大手Columbiaからの1作目というMiles Davisの気合が充分に伝わる傑作になっています。


John Coltrane (ジョン・コルトレーン)

Blue TrainBlue Train
John Coltrane
Toshiba EMI 2003-08-05

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John Coltrane [試聴]iTunes Music Store - John Coltrane


1. Blue Train
2. Moment's Notice
3. Locomotion
4. I'm Old Fashioned
5. Lazy Bird

 John Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)が1957年にBLUE NOTE(ブルー・ノート)で唯一録音したハード・バップ期の名盤。
 John Coltraneは1955年に参加したThe Miles Davis Quintet(マイルス・デイヴィス・クインテット)で鍛え上げられて自らのスタイルを掴み、グループ休止中の1957年にはPrestige(プレスティッジ)と契約してリーダー作を発表。同年には連日Thelonious Monk(p.セロニアス・モンク)のセッションに参加して音楽理論を修行し、インスピレーションも刺激され、いよいよ才能開花という時期に来ていました。
 徐々に頭角を現してきたJohn Coltraneのリーダー作を自レーベルに残したいと考えた生粋のジャズ・ファンであるBLUE NOTEのオーナー、Alfred Lion(アルフレッド・ライオン)の懇願を聞き入れたJohn Coltraneが当時の所属レーベル、Prestigeと相談して実現したレコーディングであり、その為BLUE NOTE側からはメンバー、収録楽曲など、全てJohn Coltraneに任せるという好条件を提示され、John Coltraneも現時点で出来うる限りの全てを注ぎ込み、暖めていた自作曲も惜しげもなく披露。収録された楽曲のレベルの高さにより、John Coltraneはプレイヤーとしてだけでなく、作曲家としても高い評価を得るようになります。
 参加メンバーはリズム・セクションにThe Miles Davis Quintetで気心の知れたPaul Chambers(b.ポール・チェンバース)、Philly Joe Jones(ds.フィリー・ジョー・ジョーンズ)。幾度かの共演時の演奏で注目していたKenny Drew(p.ケニー・ドリュー)、Curtis Fuller(tb.カーティス・フラー)。そして、Art Blakey & The Jazz Messengersでの演奏で名を馳せ、後にBULE NOTEの看板プレイヤーとなるLee Morgan(tp.リー・モーガン)を加えた3管編成のセクステット(6人編成)。本格的なJohn Coltrane時代を築く1960年代の求道的な重たい演奏ではなく、自分のスタイルを確立したJohn Coltraneの自信に満ちた伸び伸びとした演奏でハード・バップ・ジャズを聴かせてくれます。
 個人的なイチオシは"Moment's Notice"。まだジャズ初心者だった頃、気に入って頻繁に聴いていた、私をジャズの世界に導いてくれた名曲のひとつです。
(1957年9月15日録音)


SoultraneSoultrane
John Coltrane
Universal Japan 2006-06-13

[ジャケット写真をクリックするとリンク先のAmazonで試聴できます。]

1. Good Bait
2. I Want To Talk About You
3. You Say You Care
4. Theme For Ernie
5. Russian Lullaby

 ハード・バップ期のJohn Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)では1958年に録音された『Soultrane』もお勧めの名盤です。空間を音で埋めつくような、John Coltraneの代名詞"シーツ・オブ・サウンド"をはじめ、John Coltraneのテナー・サックスの特徴が詰まったアルバムであり、その後のJohn Coltraneの軌跡を追う上でも基本となるアルバムです。『Blue Train』(1957年)の3管での演奏から、ここではThe Miles Davis Quintetでの盟友、Red Garland(p.レッド・ガーランド)、Paul Chambers(b.ポール・チェンバース)のRed Garland Trioを迎えての1ホーンでの演奏(ドラムはArt Taylor/アート・テイラー)。3管には3管の良さと魅力がありますが、本作での1ホーンでの演奏もJohn Coltraneの特徴的なテナー・サックスの音、アドリブの構築の仕方など、遂に確立されたJohn Coltraneの音楽性が堪能できるという魅力があります。
(1958年2月7日録音)

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April 19, 2008

Bags' Groove/Miles Davis and the Modern Jazz Giants (マイルス・デイヴィス)

B0014DM8OSBags' Groove
Miles Davis & Modern Jazz Giants
Universal Japan 2008-04-01

Miles Davis - Bags' Groove [試聴]iTunes Music Store - Bags Groove


 Miles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)を始めとする革新的なミュージシャン達が推し進めたジャズの新たなスタイル、ハード・バップ。そのハード・バップ元年ともいえる1954年末のクリスマスに行われた、Miles DavisとThelonious Monk(p.セロニアス・モンク)の所謂"喧嘩セッション"として有名なクリスマス・セッションと前作『Walkin'』を録音した2ヵ月後に行われたSonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)等とのセッションを収録したアルバム『Bags Groove』(1957年発表)。
 Miles Davisが「俺のソロのバックでピアノを弾くな。」と師匠格ともいえる大先輩、Thelonious Monkに発言したことから伝わる伝説のセッションですが、実際には音楽上の演出効果と自分のトランペットにThelonious Monkのピアノは合わないと感じていたMiles Davisの要望からでた発言であり、モンクが気分を害した可能性はあったとしても、喧嘩セッションというような悪い雰囲気の中で行われたものではなかったようです。
 しかし、面白いことに本作に収録された2テイクの"Bags' Groove"や姉妹盤『Miles Davis and the Modern Jazz Giants』(1958年発表)には喧嘩セッションという通称に違わない緊張感を持ったスリリングな名演が残されており、充分に間を取って鋭く切り込むThelonious Monkのピアノと極めてシンプルに一音一音に緊張感と存在感を持ったMiles Davisのトランペット、そしてその間を突き進むMilt Jackson(vib.ミルト・ジャクソン/MJQ)のリズミカルでメロディアスな気品のあるヴィブラフォン。すべての音が時に宙に分散し、時に絡み合って一体となり飛翔する、唯一無比の3人が醸し出すハード・バップが急速に円熟していった時期の名盤です。(1957年発売)


1. Bags' Groove [Take 1]
2. Bags' Groove [Take 2]
3. Airegin
4. Oleo
5. But Not for Me [Take 2]
6. Doxy
7. But Not for Me [Take 1]

Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
Thelonious Monk - piano (セロニアス・モンク) Trk.1,2
Milt Jackson -vibraphon (ミルト・ジャクソン) Trk.1,2
Sonny Rollins -tenor sax (ソニー・ロリンズ) Trk.3-7
Horace Silver -piano (ホレス・シルバー) Trk.3-7
Parcy Heath -bass (パーシー・ヒース)
Kenny Clarke -drums (ケニー・クラーク)

*trk.1,2 - 1954年12月24日録音
*trk.3-7 - 1954年 6月29日録音


Thelonious Monk 冒頭2テイクの"Bags' Groove"がJohn Lewis(p.ジョン・ルイス)抜きのThe Modern Jazz Quartetモダン・ジャズ・カルテット/MJQ)、プラスMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)&Thelonious Monk(p.セロニアス・モンク)によるクリスマス・セッション、その他5曲がSonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)の楽曲と演奏をフューチャーした演奏です。(クリスマス・セッションの残りの録音は下記『Miles Davis and the Modern Jazz Giants』に収録。)
 Miles Davisの所属するPresitige(プレスティッジ)の要望によるレコーディング初共演のThelonious Monkは、ユニークな演奏と曲想でジャズというより"モンク・ミュージック"という1つのジャンルを形成していると言っても良いミュージシャンですが、間を活かした緊張感のある演奏が創り上げる独特の音空間など、明らかにMiles Davisが影響を受けていたミュージシャンの一人であり、本作でも圧倒的な存在感を持つThelonious MonkにMiles Davisが立ち向かうといった構図が感じられ、そういう意味では"喧嘩セッション"というのも強ち間違いではないのかもしれません。(因みに"Bags"とは作曲者Milt Jacksonのニック・ネーム。=目の下の隈のこと。何かのセッションの時に二日酔いのMilt Jacksonが目の下に隈を作って駆けつけた事から命名された様です。)
 また、1954年6月29日録音曲はMiles Davisが早くから才能を高く評価していたSonny Rollinsを前面に押し出すべくSonny Rollinsのオリジナル曲"Airegin"、"Oleo"、"Doxy"を録音。Sonny Rollinsも御大Miles Davisを前に、持ち味である豪快で朗々と響くブローイングを堪能できる名演を聴かせてくれます。しかし、(重箱の隅をつつくようですが)ドラッグの影響からか若干好不調の波が感じられる部分があるのが残念なところ。2テイク収録されている失恋の歌"But Not For Me"はGeorge Gershwinのミュージカル挿入歌。後年、John Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)、Red Garland(p.レッド・ガーランド)等、多くのミュージシャンにカヴァーされているスタンダードですが、インストゥルメンタルでの演奏では本作『Bags' Groove』でのMiles Davisの演奏がベストではないかと思います。まず、マイルス・ヴァージョンありき、と言った感じでしょうか。(ヴォーカルものではChet Baker/tp,vo.チェット・ベイカーの『Chet Baker Sings』がイチオシ。)
 この録音後、Sonny RollinsはClifford Brown & Max Roach Quintetクリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテット)のサイドマンとして復帰する1955年11月まで最初の引退状態に入ります。(この後もSonny Rollinsは1950年代末の人気絶頂時の突然の引退、1961年復帰。そして、1969年の引退、1972年復帰など、演奏面、精神面の問題から三度に渡って引退復帰を繰り返します。)

 リーダーのアドリブを如何に聴かせるかが重要だったBe Bop(ビ・バップ)の時代から1954年頃までのジャズ・コンボは、その時々のレコーディング・セッション、ライブによって集められたメンバーによるものであり、固定されたメンバーによるものは多くはありませんでしたが、演奏者全員の機能的な結びつきが重要視されるハード・バップという音楽の性質上、パーマネントなグループ結成の必要性を感じたMiles Davis(マイルス・デイヴィス)は更なる音楽的なレベルの向上を目指し、この後レギュラー・コンボ、後に黄金のクインテットと呼ばれることになるグループ結成へと向かうことになります。


B000000YJCMiles Davis and the Modern Jazz Giants
Miles Davis
Prestige/OJC 1991-07-01

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Miles Davis - Miles Davis and the Modern Jazz Giants [試聴]iTunes Music Store - Miles Davis and the Modern Jazz Giants


1. Man I Love [Take 2]
2. Swing Spring
3. 'Round Midnight
4. Bemsha Swing
5. Man I Love [Take 1]

Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
John Coltrane -tenor sax (ジョン・コルトレーン) Trk.3
Red Garland -piano (レッド・ガーランド) Trk.3
Paul Chambers -bass (ポール・チェンバース) Trk.3
Philly Joe Jones -Drums (フィリー・ジョー・ジョーンズ) Trk.3

*trk.1,2,4,5 - 1954年12月24日録音
*trk.3 - 1956年10月26日録音

 クリスマス・セッションで録音された残り4曲と1956年に黄金のクインテットで録音したThelonious Monk(p.セロニアス・モンク)作"'Round Midnight"(Columbia移籍第1弾として1957年に発表されたアルバム『'Round About Midnight』に収録されたものとは別ヴァージョン。録音は本作収録のヴァージョンが1ヶ月程あと。)を収録したアルバム。

 クリスマス・セッションの残り4曲、と聞くとアルバムの出来も悪そうですが、実は正反対。『Bags' Groove』と比較した場合、こちらを上に挙げるジャズ・ファンも決して少なくない名盤です。
 大手Columbia(コロンビア/CBS)移籍前後の1956年-1957年頃から人気絶頂期を迎えていたThe Miles Davis Quintet(マイルス・デイヴィス・クインテット)の人気に便乗して、Miles Davisの旧所属レーベルである商売上手なPrestige(プレスティッジ)が何らかの理由でお蔵入りしていた手持ちの音源の中から、黄金のクインテットがPrestigeに残したマラソン・セッションの音源"'Round Midnight"、1956年に名盤『Saxophone Colossus』を発表してサックス・プレイヤーとしてトップ・レベルの実力と人気を獲得していたSonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)との共演音源、そして Thelonious Monk(p.セロニアス・モンク)、Milt Jackson(vib.ミルト・ジャクソン/モダン・ジャズ・カルテット)等との1954年録音音源を組み合わせて『Bags' Groove』(1957年発売)、『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』(1958年発売)の2枚に仕上げて順番に発売したのではないかと考えられ、単に2枚のアルバムに分けられただけで、決してどちらが内容的に劣っているという訳ではありません。何れにせよ、どの音源も録音後暫く未発表(Prestigeの大量の録音テープの中に埋もれていた?)になっていたのが不思議な程の名演揃い。特に『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』は、モンク入門、MJQ(Milt Jackson)入門にも最適です。
(元々Prestigeは、とりあえず何でも録音しておいて、後から発売するという大量制作方針。その為、Prestigeのアルバムは玉石混淆とも言われています。もちろん『Bags' Groove』、『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』は玉の方。また、Prestigeは正式に契約の切れた1956年以降も未発表音源、その後のMiles Davisの人気上昇見越して温存していた音源などを利用して、1961年頃までMiles Davisで商売しています。)

 録音から数年後とはいえ、この音源が世に出たことは素晴らしいことですが、強いていうなら、1956年録音の"'Round Midnight"(演奏が悪いわけではない)を外して、"Bags' Groove"も含めた1954年録音のクリスマス・セッションだけの1枚物として発表した方が名盤度も上がったのではないかと思います。しかし、1枚で売るより、1枚分に満たない幾つかの未発表音源と組み合わせて2枚に分けて売った方が2倍の収益が上がると考えたであろう(ミュージシャンからの評判が非常に悪かったと言われる)Prestigeのミュージシャンを無視した商売優先の編集は残念。

 伝説のセッションのエピソードとしてよく紹介される"Man I Love"[Take 2]。アドリブの途中で気が乗らなかったのか突然中途半端にソロを中断したThelonious Monkに対して「早く続けろ」とでも言うようにトランペットを吹き始めるMiles Davis(リズムだけになってしまった演奏を何とか立て直そうとしただけのようですが)、そして展開されるThelonious Monkの素晴らしいピアノ・ソロ。演奏を止めたのか、長すぎる"間"だったのか定かではありませんが、本来なら没になってもおかしく無いテイクから垣間見える特異なモンクのキャラクターと才能、そして"喧嘩セッション"(実際には喧嘩など無かったとはいえ)という曰くを生んだスリリングで緊張感あるテイクとなっています。


Sonny Rollins (ソニー・ロリンズ)

B000EGDAI4Saxophone Colossus
Sonny Rollins
Prestige 2006-03-21

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Sonny Rollins - Saxophone Colossus (Rudy Van Gelder Remaster) [試聴]iTunes Music Store - Saxophone Colossus


1. St. Thomas
2. You Don't Know What Love Is
3. Strode Rode
4. Moritat
5. Blue 7

Sonny Rollins -tenor sax (ソニー・ロリンズ)
Tommy Flanagan -piano (トミー・フラナガン)
Doug Watkins -bass (ダグ・ワトキンス)
Max Roach -drums (マックス・ローチ)

Sonny Rollins "St.Thomas"、"Moritat"といった代表曲を収録した、Sonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)の一家に一枚的名盤。(1956年6月22日録音)
 Sonny Rollinsは自らの演奏を見つめ直すために1954年11月頃から引退状態にありましたが(この間、後に黄金のクインテットと呼ばれることになるMiles Davisのコンボへの参加を断っています)、Clifford Brown & Max Roach Quintetクリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテット)のサイドマンとしてジャズ・シーンに復帰。リーダー作となる本作でもMax Roach(ds.マックス・ローチ)が全面的にバック・アップしています。
 自由奔放で歌心溢れるSonny Rollinsのテナー・サックスの魅力が詰まったアルバムであると共に、流麗なアドリブ・ソロ、各楽器同士の駆け引き等、ハード・バップ・ジャズの魅力の全てが集約された、ジャズの名盤の宝庫である1956年を代表するアルバムです。

 尚、備考ながら、このアルバムが録音された4日後にSonny Rollinsがサイドマンを務めていたClifford Brown & Max Roach Quintetの天才トランペッター、Clifford Brown(tp.クリフォード・ブラウン)が自動車事故のため亡くなっています。

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April 11, 2008

Walkin'/MILES DAVIS ALL STARS (マイルス・デイヴィス)

The Miles Davis All Stars: Walkin'Walkin'
Miles Davis
Universal Japan 2006-06-13

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Miles Davis - Walkin' [試聴]iTunes Music Store - Walkin'


 Miles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)を始めとする黒人ミュージシャンのホットでハードな演奏が、白人ミュージシャン主導のクール・ジャズが主流の当時のジャズ・シーンに受け入られず、数々の名演を残しながらも送った不遇の1950年代初頭。本作『The Miles Davis All Stars: Walkin'』は、その後黒人ミュージシャン達の演奏が徐々にシーンに浸透して人気を確立、本来黒人のものであったジャズの覇権を取り戻し、Miles Davis自らもドラック渦を克服して1954年に発表したジャズ・シーンへの完全復活作。
 また、このアルバムが発表された1954年はArt Blakey(ds.アート・ブレイキー)、Clifford Brown(tp.クリフォード・ブラウン) & Max Roach(ds.マックス・ローチ)の双頭コンボ等の優れた作品が発表され、ハード・バップというジャズの新しい時代が遂に到来した記念すべき年でもあります。


1. Walkin'
2. Blue 'N' Boogie
3. Solar
4. You Don't Know What Love Is
5. Love Me or Leave Me

Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
J.J.Johnson -Trombone (J.J.ジョンソン) Trk.1,2
Lucky Thompson -tenor sax (ラッキー・トンプソン) Trk.3-5
Dave Sildkraut -alt sax (デイヴ・シルドクラウト) Trk.1,2
Horace Silver -piano (ホレス・シルバー)
Parcy Heath -bass (パーシー・ヒース)
Kenny Clarke -drums (ケニー・クラーク)

*trk.1,2 - 1954年4月29日録音
*trk.3-5 - 1954年4月 3日録音

 ハード・バップ・スタイルが確立され、Miles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)の確信が自信へと変わった力強い演奏で繰り広げるモダン・ブルーズの名セッションです。
 様々なスタイルに形を変えて1960年代まで演奏され続けることになる、タイトル・ナンバーであり、モダン・ジャズを代表する名演のひとつ"Walkin'"。1964年のライブ盤『Four & More(フォー・アンド・モア)』でのTony Williams(ds.トニー・ウイリアムス)の怒涛のドラミングで疾走するヴァージョンも有名ですが、本作ではブルース・フィーリング溢れる"Walkin'"を堪能できます。
 その他の収録曲も名曲、名演揃い。今一歩参加メンバーには浸透しきっていない部分も感じられますが、当時Miles Davisが新たに目指したグループの統一感と躍動感、そして間を生かしたクールでソフトなハード・バップ・スタイルの方向性が、しっかりと表現されたアルバムです。
 前半2曲のブルーズ・セッション(ブルーズとは言っても2曲目の"Blue 'N' Boogie"のノリと勢いはロックン・ロール並み)の熱演に続き後半はMiles Davisの時に力強く、時に繊細な、叙情性豊かな必殺ミュート・トランペットが炸裂。後年Miles Davisのミュート奏法は更に進化して表現力を増しますが、本作でも充分素晴らしい演奏を聴かせてくれます。ピアノのHorace Silver(p.ホレス・シルヴァー)もスウィング感のある明朗なフレーズを繰り出して全篇に渡って好調。ラストの"Love Me or Leave Me"でのKenny Clarke(ds.ケニー・クラーク)の軽快なブラッシュ・ワークも見事。


Clifford Brown and Max Roach (クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ)

B00008KKT9Clifford Brown & Max Roach+2
Clifford Brown Max Roach Quintet
ユニバーサル ミュージック クラシック 2003-04-23

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Clifford Brown & The Max Roach Quintet - Clifford Brown & Max Roach (1954-1955) [試聴]iTunes Music Store - Clifford Brown & Max Roach


1. Delilah
2. Parisian Thoroughfare
3. Daahoud
4. Joy Spring
5. Jordu
6. Blues Walk
7. What Am I Here For?

Clifford Brown -trumpet (クリフォード・ブラウン)
Harold Land -tenor sax (ハロルド・ランド)
Richie Powell -piano (リッチー・パウエル)
George Morrow -bass (ジョージ・モロウ)
Max Roach -drums (マックス・ローチ)

Clifford Brown & Max Roach Miles Davis(マイルス・デイヴィス)低迷期に突如として登場した天才トランペッター、Clifford Brownクリフォード・ブラウン)とCharlie Parker(as.チャーリー・パーカー)の時代から活躍するドラマー、Max Roach(マックス・ローチ)が結成した双頭ハード・バップ・コンボ。Clifford Brownが夭逝して活動期間が短かった為か、一般的な知名度はMiles Davisのクインテット、Art Blakey(ds.アート・ブレイキー)のThe Jazz Messengers(ジャズ・メッセンジャーズ)、John Lewis(p.ジョン・ルイス)とMilt Jackson(Vib.ミルト・ジャクソン)のThe Modern Jazz Quartet(モダン・ジャズ・カルテット/MJQ)などに較べると低いものの、ジャズ・ファンには御馴染みの1950年代を代表する名コンボのひとつです。

Clifford Brown and Max Roach Quintet 残念なことに本作『Clifford Brown & Max Roach』(1954-1955)録音後の1956年に25歳の若さで交通事故により亡くなってしまいますが、高度なテクニックと次から次へと溢れ出る魅力的で輝くようなメロディー・ライン、トランペットを吹くことについては間違いなくMiles Davisの上をいったClifford Brownと豊富な経験と正確無比なドラミングで演奏を支えながら、その中に多様なアイディアを詰め込んだMax Roachが残した傑作。テナー・サックスのHarold Land(ハロルド・ランド)の貢献度も高い。
 Miles Davisが『Dig』(1951年)で行った様なホットでハードなハード・バップ・スタイルを推し進め、大きく開花させたArt Blakey(ds.アート・ブレイキー)の『A Night at Birdland, Vol.1』(バードランドの夜)と共にハード・バップ時代到来を告げたアルバムと言っても過言では無い、ハード・バップ誕生期の名盤です。
(1954年8月2日、3日、6日・1955年2月24日、25日録音)


A Night at Birdland, Vol.1/バードランドの夜 Vol.1A Night at Birdland, Vol.1
Art Blakey Quintet
Toshiba EMI 2001-07-31

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Art Blakey - A Night At Birdland, Vol.1 [試聴]iTunes Music Store - A Night At Birdland, Vol.1


 天才トランペッター、Clifford Brown(tp.クリフォード・ブラウン)も参加した、1954年に発表されたArt Blakey(ds.アート・ブレイキー)のハード・バップ誕生を高らかに告げた躍動感溢れる名盤。(1954年2月21日収録)

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March 29, 2008

Volume 1 & 2/MILES DAVIS (マイルス・デイヴィス)

Miles Davis Volume 1Miles Davis, Vol.1
Miles Davis
Toshiba EMI 2001-07-17

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Miles Davis - Miles Davis, Vol. 1 [試聴]iTunes Music Store - Miles Davis, Vol. 1


 1950年代初頭、ジャズの世界で確固たる人気を確立したMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)が、BLUE NOTE(ブルーノート)に残した1952年から1954年にかけて行った3回のセッションを2枚のアルバム(『Volume 1』『Volume 2』)にまとめた、Miles Davisがハード・バップ・スタイル確立へ向かう過程と模索、そして熱い名演奏がたっぷりと収録された作品集。
 その人気とは裏腹に、白人ミュージシャン主導のクール・ジャズが主流となりつつあったジャズ・シーン(皮肉なことに黒人のMiles Davis自らが創始者の一人。『Birth of The Cool/クールの誕生』 - 1948年)、そしてドラッグ中毒という問題も抱え、プレイヤーとしての信頼を失いつつもあったMiles Davisの再生を信じたBLUE NOTEのオーナー、Alfred Lion(アルフレッド・ライオン)の期待に応えたMiles Davisがドラッグ中毒を克服しつつ数多くの奇跡的な名演奏を行った、Miles Davis自身の人生にとって大きなターニング・ポイントになったのではないかと思われるアルバムです。
 Miles DavisがBLUE NOTEに残した作品はこの2作のみですが、レーベルのオーナーである前に、一人のジャズ・ファンであったAlfred Lionの存在が無ければ、その後ジャズの帝王として頂点を極めるMiles Davisは無かったのかもしれません。


[Volume 1]
1. Dear Old Stockholm
2. Chance It
3. Donna
4. Woody 'n' You
5. Yesterdays
6. How Deep Is The Ocean
7. Chance It (Alternate Take)
8. Donna (Alternate Take)
9. Woody 'n' You (Alternate Take)
10. Take Off
11. Lazy Susan
12. Leap
13. Well You Needn't
14. Weirdo
15. It Never Entered My Mind

[1952年5月9日録音 - Volume 1 Trk.1-9]
Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
J.J.Johnson -Trombone (J.J.ジョンソン)
Jackie McLean -alt sax (ジャッキー・マクレーン)
Gil Coggins -piano (ギル・コギンズ)
Oscar Pettiford -bass (オスカー・ペティフォード)
Kenny Clarke -drums (ケニー・クラーク)

[1954年3月6日録音 - Volume 1 Trk.10-15]
Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
Horace Silver -piano (ホレス・シルバー)
Parcy Heath -bass (パーシー・ヒース)
Art Blakey -drums (アート・ブレイキー)

 発売以来、収録曲順の変更、ボーナス・トラック追加収録、『Volume 1』と『Volume 2』を合わせて2枚組アルバムとして編集されたりと様々な形で発売されていますが(『マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.1 & Vol.2』他)、現在は当時の録音エンジニア、Rudy Van Gelder(ルディ・ヴァン・ゲルダー)がリマスターを行い、収録曲順を録音年別にまとめた本シリーズが主流のようです。個人的には嘗て聴いていた馴染みのあるものと比べて収録曲順に若干違和感があるものの、リマスターによる音質の向上に加え、各年ごとの演奏をCDプレイヤーの面倒な操作無しに堪能できること、そしてドラッグ渦の中にいながら最初からハード・バップの完成形をしっかりと見据えていたかのようなMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)の演奏と参加メンバーにハード・バップ・スタイルが徐々に浸透して行く様が感じられることなどから、なかなか気に入ったフォーマットでもあります。

 1952年の大御所J.J.Johnson(tb.J.J.ジョンソン)、Oscar Pettiford(b.オスカー・ペティフォード)、Kenny Clarke(ds.ケニー・クラーク)等との3管での演奏(『Volume 1』収録)。サックスがアルト・サックスのJackie McLeanジャッキー・マクレーン)からテナーのJimmy Heathジミー・ヒース)に代わり、ドラムにArt Blakeyアート・ブレイキー)を迎えた1953年の演奏(『Volume 2』収録)。そしてMiles Davisのワンホーンでの演奏を収めた1954年(『Volume 1』収録)。
 明らかに体調的には不調であったであろう1952年の録音ですら、曲によって好不調の波は感じられるものの"Dear Old Stockholm"、"Yesterdays"など、ドラッグの影響など全く見せない素晴らしい演奏を残しており、魅力的なハーモニーを聴かせる"Kelo"、J.J.Johnson(J.J.ジョンソン)作曲の魅惑の名バラード"Enigma"、Bud Powell(p.バド・パウエル)作曲の"Tempus Fuit"、Jimmy Heathの代表曲"C.T.A."での白熱したプレイ等を収録した1953年録音楽曲。そして1954年、ミュージック・シーンへの完全復活を高らかに告げる"Take Off"、貴重なカップ・ミュートでのバラードの名演"It Never Entered My Mind"、影響は受けつつも音楽的には遂に相見える事の無かった奇才Thelonious Monk(p.セロニアス・モンク)作曲"Well You Needn't"などの名演が収録されており、Miles Davis復活へのドキュメント、ハード・バップ誕生前夜の記録というだけでなく、Miles Davisを聴く上で、(まず1番に聴くべきアルバムを言う訳ではありませんが)何時かは聴いておきたいMiles Davisの残した名盤のひとつ(2枚)と言える内容になっています。個人的には特に『Volume 2』に収録されている1953年の演奏が秀逸ではないかと思います。
 但、"Dear Old Stockholm"、"Woody 'n' You"、"It Never Entered My Mind"等、後に再演される楽曲については、先に後年の再演版を聴いてしまうと、アレンジ面、演奏、グループの統一感など、聴く人の好みにもよりますが、物足りなく感じるケースもあるかもしれません。


Miles Davis Volume 2Miles Davis, Vol. 2
Miles Davis Jimmy Heath
Toshiba EMI 2001-07-17

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Miles Davis - Miles Davis, Vol.2 (RVG Edition) [試聴]iTunes Music Store - Miles Davis, Vol. 2


[Volume 2]
1. Kelo
2. Enigma
3. Ray's Idea
4. Tempus Fuit
5. C.T.A.
6. I Waited For You
7. Kelo (Alternate Take)
8. Enigma (Alternate Take)
9. Ray's Idea (Alternate Take)
10. Tempus Fugit (Alternate Take)
11. C.T.A. (Alternate Take)

[1953年4月20日録音 - Volume 2 Trk.1-11]
Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
J.J.Johnson -trombone (J.J.ジョンソン)
Jimmy Heath -tenor sax (ジミー・ヒース)
Gil Coggins -piano (ギル・コギンズ)
Parcy Heath -bass (パーシー・ヒース)
Art Blakey -drums (アート・ブレイキー)

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March 21, 2008

Dig/MILES DAVIS featuring SONNY ROLLINS (マイルス・デイヴィス、ソニー・ロリンズ)

Miles Davis DigDig
Miles Davis
Universal Japan 1990-10-25

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Miles Davis - Dig [試聴]iTunes Music Store - Dig


 Charlie Parker(as.チャーリー・パーカー)のバンドに参加以来、徐々に頭角を現してきたMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)は、Charles Parker、Dizzy Gillespie(tp.ディジー・ガレスピー)、Bud Powell(p.バド・パウエル)等の創り上げた、コード進行に基づいて自由にアドリブを繰り広げるビ・バップ(Be Bop)の命を削るかのような壮絶で過酷な演奏スタイルに限界を感じて、Charles Parkerの元を離れた後に九重奏団を結成。ウエスト・コースト・ジャズの流れを汲むクール・ジャズ(Cool Jazz)という新たなスタイルでアレンジ重視の、ある意味実験的な『Birth of The Coolクールの誕生)』(1948年)を発表。
 そしてその後、Art Blakey(ds.アート・ブレイキー)、Sonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)、Jackie McLean(as.ジャッキー・マクレーン)等と共に、フレーズをよりメロディアスに洗練させつつ、スター・プレイヤーのアドリブのみがメインだったビバップとは違った、バンド・アンサンブル重視のハード・バップ・スタイル(Hard Bop)の基礎を創り上げたのが1951年に発表された本作『Dig(ディグ)』です。


1. Dig
2. It's Only a Paper Moon
3. Denial
4. Bluing
5. Out of the Blue

Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
Sonny Rollins -tenor sax (ソニー・ロリンズ)
Jackie McLean -alt sax (ジャッキー・マクレーン)
Walter Bishop -piano (ウォルター・ビショップ)
Tommy Porter -bass (トミー・ポーター)
Art Blakey -drums (アート・ブレイキー)

Charlie Parker & Miles Davis 歴史的な名盤とまでは言えないものの、先人達がジャズを芸術にまで高めたビバップ・スタイルを、若き日の後の巨匠達が新たなハード・バップという新境地に進むべく繰り広げる熱い演奏が魅力的な1枚。
 Miles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)主導でハードバップという新たなアイディアを取り入れたアルバムではありますが、実はドラムのArt Blakey(ds.アート・ブレイキー)の果たした役割が非常に大きく感じられるアルバムでもあり、1曲目のタイトル・ナンバー"Dig"での鮮烈な印象もあってか、全体的にArt Blakeyのドラムに牽引され、尚且つ刺激を受けながらMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)が全体像を創り上げ、それに乗せられてSonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)、Jackie McLean(as.ジャッキー・マクリーン)等が、新たなジャズの試みを熱く、そして奔放に吹きまくるという、Art Blakeyのドラムがあったからこそ、こういう形に仕上がったと言っても過言では無いアルバムになっています。そう考えるとハード・バップ誕生への過程において、Art Blakeyの貢献度はMiles Davisと並ぶほどの高い価値を持っていたのかもしれません。

Art Blakey 所謂「ジャズ」という言葉を聞いて一般的な音楽ファンが思い浮かべるのが、1940年代から1950年代にかけてのビバップ、ハード・バップ期のジャズ・スタイルではないかと思います。Miles Davis(マイルス・デイヴィス)を聴いてみようと思い立ったマイルス初心者が、よくある名盤紹介的な本を読んで、突然『Birth of The Cool(クールの誕生)』、モード・ジャズ期の『Kind of Blue(カインド・オブ・ブルー)』(1959年)、エレクトリック期の『Bitches Brew(ビッチェズ・ブリュー)』(1969年)などを聴いてしまって投げ出してしまうより、ビバップからハード・バップへの移行期の好盤『Dig』、ハード・バップ・スタイルの完成形ともいえる『Relaxin'リラクシン)』を始めとする"ing4部作"、大手コロンビアと契約して一気にMiles Davisの知名度を高めた『'Round About Midnightラウンド・アバウト・ミッドナイト)』(1957年)あたりから気楽に聴いてみるのも正解のひとつではないかと思います。


Art Blakey (アート・ブレイキー)

A Night at Birdland, Vol.1/バードランドの夜 Vol.1A Night at Birdland, Vol.1
Art Blakey Quintet
Toshiba EMI 2001-07-31

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Art Blakey - A Night At Birdland, Vol.1 [試聴]iTunes Music Store - A Night At Birdland, Vol.1


1. Announcement by Pee Wee Marquette
2. Split Kick
3. Once in a While
4. Quicksilver
5. Night in Tunisia
6. Mayreh

Clifford Brown -trumpet (クリフォード・ブラウン)
Lou Donaldson -alt sax (ルー・ドナルドソン)
Horace Silver -piano (ホレス・シルヴァー)
Curly Russell -bass (カーリー・ラッセル)
Art Blakey -drums (アート・ブレイキー)

 ハード・バップ創世記にMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)を煽ったと言っても過言では無い素晴らしい演奏を聴かせたArt Blakey(Dr.アート・ブレイキー)が、若きトランペットの新星Clifford Brown(tp.クリフォード・ブラウン)、ピアノのHorace Silver(p.ホレス・シルヴァー)、アルト・サックスのLou Donaldson(as.ルー・ドナルドソン)等を率いて1954年2月21日にジャズ・クラブ 「バードランド」で行ったライブを収録した、ホットでエキサイティングなジャズの楽しさが詰め込まれたハード・バップ誕生を高らかに告げる名盤『A Night at Birdland, Vol.1(バードランドの夜 Vol.1)』。
 Miles Davisは『Dig』(1951年)以降、徐々にクールでソフトなハード・バップ・スタイルへと向かいますが、『Dig』で聴かせたホットなハード・バップを極めたのがこのArt Blakey。強烈なシンバル・ワーク、スネアを豪快に連打する通称"ナイアガラ瀑布"(ばくふ=滝)と呼ばれた十八番のロール奏法、Art Blakeyのファンキーなドラムが快調に飛ばしてバンドを牽引する、躍動感溢れる演奏が満載。ジャズを聴きいてみたいというジャズ初心者に私が一番に勧めるのがこのアルバムです。

Clifford Brown Charlie Parker(as.チャーリー・パーカー)を驚愕させ、トランペッターとしての実力はMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)を凌ぐとまで言われた、夭折した天才Clifford Brown(本作発表の2年後に交通事故の為、25歳の若さで死去。)のメロディーを美しく歌い上げるような艶やかな音色とホットで流麗なアドリブは必聴。また、実力はあるものの、この後の活動が地味で目立たなかった為、今日では評価されることの少ないLou Donaldsonのサックスもこの日は絶好調。天才Clifford Brownと互角の真っ向勝負で、Charles Parkerが乗り移ったかのような素晴らしい演奏を聴くことが出来ます。
 また