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2010年06月06日

Drama/YES (イエス)

B003A9FMVAドラマ
イエス
ワーナーミュージック・ジャパン 2010-05-26

 新作製作に向けてのセッション中にバンドでの活動に限界を感じたJon Anderson(Vo.ジョン・アンダーソン)とRick Wakeman(Key.リック・ウェイクマン)が脱退。バンド存続の道を模索する残されたメンバーは、ニュー・ウェーブへの対応、マンネリの打破、バンドの創作能力の底上げ、という一石三鳥を狙ったのかどうかは分かりませんが、抜けたヴォーカルとキーボードの穴埋めに、80年代の音楽シーンに多大な影響を与えることになるMTVが生んだポップ・スターThe Buggles(バグルス)を大胆にも吸収合併。
 シングル"Video Killed The Radio Star(ラジオ・スターの悲劇)"を大ヒットさせていたニュー・ウェーブの旗手とオールド・ウェーブの代表格との合体は当時の音楽シーンにおいて衝撃的とも言えるニュースでしたが、出来上がってきた本作『Drama』(1980年発表)はThe BugglesのTrevor Horn(Vo.トレヴァー・ホーン)、Geoffrey Downes(Key.ジェフ・ダウンズ)の二人が元々YESの熱烈なファンであったため、YESらしさを尊重しながら、The Buggles組の新しい音楽性もバランスよく取り入れる事にも成功した完成度の高い充実した内容。Jon Anderson不在という軽視されがちな時期に発表されたアルバムですが、間違いなくYESを代表する傑作アルバムのひとつです。


1. Machine Messiah
2. White Car
3. Does It Really Happen?
4. Into the Lens
5. Run Through the Light
6. Tempus Fugit

Trevor Horn - Vo.トレヴァー・ホーン *The Buggles
Geoffrey Downes - Key.ジェフ・ダウンズ *The Buggles
Chris Squire - B.クリス・スクワイア
Steve Howe - G.スティーブ・ハウ
Alan White - Dr.アラン・ホワイト

 この人のプロデュース、編集作業がなければ名盤『Close to the Edge(危機)』を始めとする名作群は完成し得なかったのではないかと言われたプロデューサーのEddie Offord(エディ・オフォード)、YES(イエス)の音世界を表現する上で欠かせない要素だった印象的なジャケットを手掛けていたRoger Dean(ロジャー・ディーン)というYES黄金期を支えた重要な人材が2作振りに再集結。Chris Squire(B.クリス・スクワイア)がJon Anderson(ジョン・アンダーソン)がいなくてもYESは続けられると意地を見せた力作に仕上がっています。
 懸念されたヴォーカリストの交代も新加入のTrevor Horn(Vo.トレヴァー・ホーン)がYESのイメージを壊さないようにJon Andersonを意識した歌い方をしていることや、Chris Squireのコーラスとベースが入ると不思議とYESサウンドになる事などから意外と違和感なくYESのサウンドに溶け込んでおり、同じく新加入のGeoffrey Downes(Key.ジェフ・ダウンズ)もRick Wakeman(Key.リック・ウェイクマン)やPatrick Moraz(Key.パトリック・モラーツ)のようなテクニカルで派手なスター・プレイヤーではないものの、YESへのニュー・ウェーブ・サウンドの導入、楽曲を印象付ける効果的なフレーズ、楽曲に合わせた的確なサウンド作りなど、アルバム制作に多大な貢献をしています。80年代のASIAへの布石ともいえるアイディアやサウンドが垣間見えるのも面白いところ。

 収録曲も、(オープニングはBLACK SABBATH/ブラック・サバスを思わせるような重たいギターリフから始まりますが)従来の楽曲からの延長線上にあるサウンドにThe Buggles(バグルス)風味を加えた"Machine Messiah"、反対にThe Bugglesが持ち込んだ楽曲をYESサウンドで料理した"Into the Lens"(後にThe Bugglesが2ndアルバムで"I Am A Camera"としてリメイクしていますが、出来はコチラの方が数段上)、ニュー・ウェーブ的なサウンドをYESがしっかりと昇華し、アグレッシブなサウンドに仕上げた、YESからニュー・ウェーブ勢への回答ともいえる名曲"Tempus Fugit"など、捨て曲無しと言っても良いほどの名曲、佳作揃い。
 The Buggles組が持ち込んだ、もしくは参加してから作られた曲には(その後もバンドが継続していれば)YESの新たな魅力となりえたサウンドが提示され、それまでのYESでは聴けなかった面白さがあり、旧YES組が用意していた曲も残された3人のメンバーによる力作ばかりで、演奏面に関しても、これまでの制約が取り払われたかのような自由奔放なプレイが繰り広げられており、特にChris SquireとAlan White(Dr.アラン・ホワイト)のリズム隊のコンビネーションは過去最強。過去のYESのサウンドへの拘りを捨てられれば、充分高評価に値する作品になっています。前2作で少なからず感じられたマンネリ感も完全に払拭され、個人的には、少なくとも『Going for the One(究極)』(1977年)、『Tormato』(1978年)に引けを取らない作品に仕上がっているのではないかと思います。(必ずアルバムに何曲か収録されていたJon Anderson趣味のファンタジーな楽曲が本作には1曲も入っていないのも新鮮、且つ好印象。)

 しかし、なかなかの好盤に仕上がり、セールス的にもそこそこ成果を残し、その後のYESの活動への大きな可能性を秘めたアルバムでしたが、後のJon Andersonの復帰によって、本作『Drama』発売時のツアー以降、本作収録曲がライブで演奏されることが無くなったことに加え、YES作品の中で唯一Jon Anderson不在のアルバムということから『Tormato』以上に軽視され、各楽曲、アルバム・トータルでの完成度の高さの割りに、その内容にそぐわない評価しか与えられない不遇のアルバムになってしまったのは残念な限り。
 また、重要なメンバーの交代などからYESと呼ぶには抵抗がある人が多かったと思われ、当然ながら旧YESファンからの批判は強く、元々スタジオでの作業をメインと考えてライブを行わないユニットだったThe Bugglesの、特にTrevor Hornのライブ・パフォーマンスの悪さなどからツアーは失敗に終わり、メンバーはバンド継続の意欲を失い、本作で新たな時代へのサウンド作りに成功しながらも、遂にバンドは自然消滅してしまうことになります。

 この後Trevor Horn(Vo.トレヴァー・ホーン)はプロデュース業に専念して80年代に再始動した(Jon Anderson曰く)90125 YESFrankie Goes To Hollywood(フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド)や自身のプロジェクトThe Art of Noise(アート・オブ・ノイズ)などの数多くのヒット曲を手掛けて一時代を築き、Steve Howe(G.スティーブ・ハウ)とGeoffrey Downes(Key.ジェフ・ダウンズ)は80年代を代表するロック・バンドとなったASIA結成へと向かい、Chris Squire(B.クリス・スクワイア)とAlan White(Dr.アラン・ホワイト)はドラマーのJohn Bonham(ジョン・ボーナム)を失ったLED ZEPPELIN(レッド・ツェッペリン)のJimmy Page(G.ジミー・ペイジ)等とのバンド結成(XYZ/ex YES ZEP)へ向けてのセッションと挫折(マネージメントの問題とRobert Plant/ロバート・プラントがOKを出さなかったことが原因のようです)等の紆余曲折を経て、ギタリストTrevor Rabin(トレヴァー・ラビン)を迎えての新バンドCINEMA結成とアルバム制作、そしてプロデューサーのTrevor Hornからのアドバイス、及びレーベルからの要請によるJon Anderson(ジョン・アンダーソン)の復帰によりYES再始動という道を辿ることとなります。
 こうした流れを考えると、この時期のバンドの路線、メンバーが、「90125 YES」と「ASIA」という80年代に一世を風靡して大ヒットを連発した産業ロック、3分間プログレ・バンドに繋がっていくことを考えれば、重要なアルバムでもあり、発表当時より後年徐々に評価が高まっていったアルバムでもあります。


■Video Killed The Radio Star(ラジオ・スターの悲劇)

B000J2358Sラジオ・スターの悲劇+3
バグルズ
USMジャパン 2006-12-20



B003A9FMVAドラマ
イエス
ワーナーミュージック・ジャパン 2010-05-26


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comments

当時はかなり酷評されてましたね。そのせいか、このアルバムは聞いたことがありませんでした(。僕にとってイエスは「究極」まで)

>『Going for the One(究極)』(1977年)、『Tormato』(1978年)を超える傑作
なるほど。axis_009さんの記事を切っ掛けに「トーマト」「ドラマ」も聞いてみようかな、なんて思ってます。

  • hajime
  • 2010年06月06日 18:38

このアルバムもなかなか良さそうですね。聞いた事が無いので、あまり気のきいたコメントが出来ませんが、このアルバムもいろいろな名盤紹介では無視されてきたアルバムですね。
あんまり音楽性とは関係ありませんが、トレヴァー・ホーンのルックスもちょっと良くなかったかな・・・。

  • Bert
  • 2010年06月06日 20:04

Hajimeさん
>当時はかなり酷評されてましたね
 酷評されてましたねー。私もこのアルバムの発売当初は聴いてませんでした。

>「トーマト」「ドラマ」も聞いてみようかな
 好みが分かれそうな『Tormato』はともかく、『Drama』はなかなか良いと思いますよ。


Bertさん
>トレヴァー・ホーンのルックスもちょっと良くなかったかな・・・。
 確かにそれも言えるかも…。(笑)

  • axis_009@管理人
  • 2010年06月06日 20:52

こんばんは。あたしはこのアルバムはダメ。やっぱりジョンのヴォーカルじゃないと。

>>トレヴァー・ホーンのルックスもちょっと良くなかったかな・・・。
> 確かにそれも言えるかも…。(笑)
レコード・ジャケットの中のメンバーの写真もあんまり良くなかった。(笑)

  • kyoko
  • 2010年06月06日 22:19

>発表当時より後年徐々に評価が高まっていったアルバム
僕自身がそうでした。発売されてから何年も聞かなかったし。復活したイエスが売れて人気絶頂の頃にこのアルバムも聞いてみようと思って買ってみたんじゃなかったかな?そしたら意外と良かったんで、なんだあの酷評は、なんて思っていました。

>Chris Squireのコーラスとベースが入ると不思議とYESサウンドになる
これは本当に不思議ですね。クリス・スクワイアのベース・ラインは本当に素晴らしいです。

  • taro
  • 2010年06月07日 07:44

このアルバムでイエスが復活した、なんて思ったんですが、世間は冷たかった。(笑)
でも、後でプロデューサーとして成功したからいいけど、トレバー・ホーンもイエスでいいアルバム作ったのに評価されないし、傷心でイエスを辞めてバグルス復活させたらこっちは賞味期限切れだしで当時は散々でしたね。

  • Coo
  • 2010年06月07日 19:56

kyokoさん
>やっぱりジョンのヴォーカルじゃないと。
 『Drama』も良いアルバムなんだけどなぁ。^^;

>メンバーの写真もあんまり良くなかった。(笑)
 (笑)ちょっとロック・バンドっていう感じじゃないですよね。野暮ったいと言うか…。


taroさん
>>Chris Squireのコーラスとベースが入ると不思議とYESサウンドになる
>これは本当に不思議ですね。
 それ故に、例えばABWH(アンダーソン、ブラッフォード、ウエイクマン、ハウ)が真のイエスらしかったとしても、クリス・スクワイアのいないイエスは認められません。


Cooさん
>イエスでいいアルバム作ったのに評価されないし、傷心でイエスを辞めてバグルス復活させたらこっちは賞味期限切れだし
 私は(シングルの「ラジオスターの悲劇」は聴いてましたけど)イエスのアルバムが良かったのでバグルスの1stも聴いてみた、という感じなんですが、確かにトレバー・ホーンは可哀相でしたね。バグルスのセカンドがあんまり良くなかったと言うのもありますけど、イエスに入らないで2ndに全精力を傾けてたら、というのはありますね。発売のタイミングというか、イエスにいた分、1stと2ndの間隔が空き過ぎたというのは大きいかも。その間に次々と新たなバンドが出てきてたし。

  • axis_009@管理人
  • 2010年06月07日 21:39


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