April 19, 2008
Bags' Groove/Miles Davis and the Modern Jazz Giants (マイルス・デイヴィス)
![]() | Bags' Groove Miles Davis & Modern Jazz Giants Universal Japan 2008-04-01 |
[試聴]iTunes Music Store - Bags Groove
Miles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)を始めとする革新的なミュージシャン達が推し進めたジャズの新たなスタイル、ハード・バップ。そのハード・バップ元年ともいえる1954年末のクリスマスに行われた、Miles DavisとThelonious Monk(p.セロニアス・モンク)の所謂"喧嘩セッション"として有名なクリスマス・セッションと前作『Walkin'』を録音した2ヵ月後に行われたSonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ
)等とのセッションを収録したアルバム『Bags Groove』(1957年発表)。
Miles Davisが「俺のソロのバックでピアノを弾くな。」と師匠格ともいえる大先輩、Thelonious Monkに発言したことから伝わる伝説のセッションですが、実際には音楽上の演出効果と自分のトランペットにThelonious Monkのピアノは合わないと感じていたMiles Davisの要望からでた発言であり、モンクが気分を害した可能性はあったとしても、喧嘩セッションというような悪い雰囲気の中で行われたものではなかったようです。
しかし、面白いことに本作に収録された2テイクの"Bags' Groove"や姉妹盤『Miles Davis and the Modern Jazz Giants』(1958年発表)には喧嘩セッションという通称に違わない緊張感を持ったスリリングな名演が残されており、充分に間を取って鋭く切り込むThelonious Monkのピアノと極めてシンプルに一音一音に緊張感と存在感を持ったMiles Davisのトランペット、そしてその間を突き進むMilt Jackson(vib.ミルト・ジャクソン/MJQ)のリズミカルでメロディアスな気品のあるヴィブラフォン。すべての音が時に宙に分散し、時に絡み合って一体となり飛翔する、唯一無比の3人が醸し出すハード・バップが急速に円熟していった時期の名盤です。(1957年発売)
1. Bags' Groove [Take 1]
2. Bags' Groove [Take 2]
3. Airegin
4. Oleo
5. But Not for Me [Take 2]
6. Doxy
7. But Not for Me [Take 1]
Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
Thelonious Monk - piano (セロニアス・モンク) Trk.1,2
Milt Jackson -vibraphon (ミルト・ジャクソン) Trk.1,2
Sonny Rollins -tenor sax (ソニー・ロリンズ) Trk.3-7
Horace Silver -piano (ホレス・シルバー) Trk.3-7
Parcy Heath -bass (パーシー・ヒース)
Kenny Clarke -drums (ケニー・クラーク)
*trk.1,2 - 1954年12月24日録音
*trk.3-7 - 1954年 6月29日録音
冒頭2テイクの"Bags' Groove"がJohn Lewis(p.ジョン・ルイス)抜きのThe Modern Jazz Quartet(モダン・ジャズ・カルテット/MJQ)、プラスMiles Davis(tp.マイルス・デイヴィス)&Thelonious Monk(p.セロニアス・モンク)によるクリスマス・セッション、その他5曲がSonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ
)の楽曲と演奏をフューチャーした演奏です。(クリスマス・セッションの残りの録音は下記『Miles Davis and the Modern Jazz Giants』に収録。)
Miles Davisの所属するPresitige(プレスティッジ)の要望によるレコーディング初共演のThelonious Monkは、ユニークな演奏と曲想でジャズというより"モンク・ミュージック"という1つのジャンルを形成していると言っても良いミュージシャンですが、間を活かした緊張感のある演奏が創り上げる独特の音空間など、明らかにMiles Davisが影響を受けていたミュージシャンの一人であり、本作でも圧倒的な存在感を持つThelonious MonkにMiles Davisが立ち向かうといった構図が感じられ、そういう意味では"喧嘩セッション"というのも強ち間違いではないのかもしれません。(因みに"Bags"とは作曲者Milt Jacksonのニック・ネーム。=目の下の隈のこと。何かのセッションの時に二日酔いのMilt Jacksonが目の下に隈を作って駆けつけた事から命名された様です。)
また、1954年6月29日録音曲はMiles Davisが早くから才能を高く評価していたSonny Rollinsを前面に押し出すべくSonny Rollinsのオリジナル曲"Airegin"、"Oleo"、"Doxy"を録音。Sonny Rollinsも御大Miles Davisを前に、持ち味である豪快で朗々と響くブローイングを堪能できる名演を聴かせてくれます。しかし、(重箱の隅をつつくようですが)ドラッグの影響からか若干好不調の波が感じられる部分があるのが残念なところ。2テイク収録されている失恋の歌"But Not For Me"はGeorge Gershwinのミュージカル挿入歌。後年、John Coltrane(ts.ジョン・コルトレーン)、Red Garland(p.レッド・ガーランド
)等、多くのミュージシャンにカヴァーされているスタンダードですが、インストゥルメンタルでの演奏では本作『Bags' Groove』でのMiles Davisの演奏がベストではないかと思います。まず、マイルス・ヴァージョンありき、と言った感じでしょうか。(ヴォーカルものではChet Baker/tp,vo.チェット・ベイカーの『Chet Baker Sings
』がイチオシ。)
この録音後、Sonny RollinsはClifford Brown & Max Roach Quintet(クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテット)のサイドマンとして復帰する1955年11月まで最初の引退状態に入ります。(この後もSonny Rollinsは1950年代末の人気絶頂時の突然の引退、1961年復帰。そして、1969年の引退、1972年復帰など、演奏面、精神面の問題から三度に渡って引退復帰を繰り返します。)
リーダーのアドリブを如何に聴かせるかが重要だったBe Bop(ビ・バップ)の時代から1954年頃までのジャズ・コンボは、その時々のレコーディング・セッション、ライブによって集められたメンバーによるものであり、固定されたメンバーによるものは多くはありませんでしたが、演奏者全員の機能的な結びつきが重要視されるハード・バップという音楽の性質上、パーマネントなグループ結成の必要性を感じたMiles Davis(マイルス・デイヴィス)は更なる音楽的なレベルの向上を目指し、この後レギュラー・コンボ、後に黄金のクインテットと呼ばれることになるグループ結成へと向かうことになります。
![]() | Miles Davis and the Modern Jazz Giants Miles Davis Prestige/OJC 1991-07-01 |
1. Man I Love [Take 2]
2. Swing Spring
3. 'Round Midnight
4. Bemsha Swing
5. Man I Love [Take 1]
Miles Davis -trumpet (マイルス・デイヴィス)
John Coltrane -tenor sax (ジョン・コルトレーン) Trk.3
Red Garland -piano (レッド・ガーランド) Trk.3
Paul Chambers -bass (ポール・チェンバース) Trk.3
Philly Joe Jones -Drums (フィリー・ジョー・ジョーンズ) Trk.3
*trk.1,2,4,5 - 1954年12月24日録音
*trk.3 - 1956年10月26日録音
クリスマス・セッションで録音された残り4曲と1956年に黄金のクインテットで録音したThelonious Monk(p.セロニアス・モンク)作"'Round Midnight"(Columbia移籍第1弾として1957年に発表されたアルバム『'Round About Midnight』に収録されたものとは別ヴァージョン。録音は本作収録のヴァージョンが1ヶ月程あと。)を収録したアルバム。
クリスマス・セッションの残り4曲、と聞くとアルバムの出来も悪そうですが、実は正反対。『Bags' Groove』と比較した場合、こちらを上に挙げるジャズ・ファンも決して少なくない名盤です。
大手Columbia(コロンビア/CBS)移籍前後の1956年-1957年頃から人気絶頂期を迎えていたThe Miles Davis Quintet(マイルス・デイヴィス・クインテット)の人気に便乗して、Miles Davisの旧所属レーベルである商売上手なPrestige(プレスティッジ)が何らかの理由でお蔵入りしていた手持ちの音源の中から、黄金のクインテットがPrestigeに残したマラソン・セッションの音源"'Round Midnight"、1956年に名盤『Saxophone Colossus』を発表してサックス・プレイヤーとしてトップ・レベルの実力と人気を獲得していたSonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)との共演音源、そして Thelonious Monk(p.セロニアス・モンク)、Milt Jackson(vib.ミルト・ジャクソン/モダン・ジャズ・カルテット)等との1954年録音音源を組み合わせて『Bags' Groove』(1957年発売)、『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』(1958年発売)の2枚に仕上げて順番に発売したのではないかと考えられ、単に2枚のアルバムに分けられただけで、決してどちらが内容的に劣っているという訳ではありません。何れにせよ、どの音源も録音後暫く未発表(Prestigeの大量の録音テープの中に埋もれていた?)になっていたのが不思議な程の名演揃い。特に『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』は、モンク入門、MJQ(Milt Jackson)入門にも最適です。
(元々Prestigeは、とりあえず何でも録音しておいて、後から発売するという大量制作方針。その為、Prestigeのアルバムは玉石混淆とも言われています。もちろん『Bags' Groove』、『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』は玉の方。また、Prestigeは正式に契約の切れた1956年以降も未発表音源、その後のMiles Davisの人気上昇見越して温存していた音源などを利用して、1961年頃までMiles Davisで商売しています。)
録音から数年後とはいえ、この音源が世に出たことは素晴らしいことですが、強いていうなら、1956年録音の"'Round Midnight"(演奏が悪いわけではない)を外して、"Bags' Groove"も含めた1954年録音のクリスマス・セッションだけの1枚物として発表した方が名盤度も上がったのではないかと思います。しかし、1枚で売るより、1枚分に満たない幾つかの未発表音源と組み合わせて2枚に分けて売った方が2倍の収益が上がると考えたであろう(ミュージシャンからの評判が非常に悪かったと言われる)Prestigeのミュージシャンを無視した商売優先の編集は残念。
伝説のセッションのエピソードとしてよく紹介される"Man I Love"[Take 2]。アドリブの途中で気が乗らなかったのか突然中途半端にソロを中断したThelonious Monkに対して「早く続けろ」とでも言うようにトランペットを吹き始めるMiles Davis(リズムだけになってしまった演奏を何とか立て直そうとしただけのようですが)、そして展開されるThelonious Monkの素晴らしいピアノ・ソロ。演奏を止めたのか、長すぎる"間"だったのか定かではありませんが、本来なら没になってもおかしく無いテイクから垣間見える特異なモンクのキャラクターと才能、そして"喧嘩セッション"(実際には喧嘩など無かったとはいえ)という曰くを生んだスリリングで緊張感あるテイクとなっています。
■Sonny Rollins (ソニー・ロリンズ)
![]() | Saxophone Colossus Sonny Rollins Prestige 2006-03-21 |
1. St. Thomas
2. You Don't Know What Love Is
3. Strode Rode
4. Moritat
5. Blue 7
Sonny Rollins -tenor sax (ソニー・ロリンズ)
Tommy Flanagan -piano (トミー・フラナガン)
Doug Watkins -bass (ダグ・ワトキンス)
Max Roach -drums (マックス・ローチ)
"St.Thomas"、"Moritat"といった代表曲を収録した、Sonny Rollins(ts.ソニー・ロリンズ)の一家に一枚的名盤。(1956年6月22日録音)
Sonny Rollinsは自らの演奏を見つめ直すために1954年11月頃から引退状態にありましたが(この間、後に黄金のクインテットと呼ばれることになるMiles Davisのコンボへの参加を断っています)、Clifford Brown & Max Roach Quintet(クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテット)のサイドマンとしてジャズ・シーンに復帰。リーダー作となる本作でもMax Roach(ds.マックス・ローチ)が全面的にバック・アップしています。
自由奔放で歌心溢れるSonny Rollinsのテナー・サックスの魅力が詰まったアルバムであると共に、流麗なアドリブ・ソロ、各楽器同士の駆け引き等、ハード・バップ・ジャズの魅力の全てが集約された、ジャズの名盤の宝庫である1956年を代表するアルバムです。
尚、備考ながら、このアルバムが録音された4日後にSonny Rollinsがサイドマンを務めていたClifford Brown & Max Roach Quintetの天才トランペッター、Clifford Brown(tp.クリフォード・ブラウン)が自動車事故のため亡くなっています。
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- by axis_009
- at 00:04
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comments
モンクってハマると深いですよね。不協和音みたいなのが、そのうち心地よくなっちゃったり、変なリズムやメロディーが体に馴染んでしまったり。
ダメな人には絶対ダメなミュージシャンですが、一度はチャレンジする甲斐のあるミュージシャンだと思います。
本当に喧嘩してぴりぴりしたムードの中で演奏していた、と言っても信じられる演奏だと思います。僕はどちらかというと「マイルス・デイヴィス・アンド・モダン・ジャズ・ジャイアンツ」の方が好きかな。
でも、何故クリスマス・セッションを2枚のアルバムに分けちゃったんだろう。中途半端ですよね。
PS.人には勧めませんが、モンクは大好きなんですよ。
hajimeさん
takuさん
確かにセロニアス・モンクは、なかなか人には勧め難いピアニストですね。まぁ、ジャズ初心者に勧めるミュージシャンでも無いし、反対にジャズをある程度聴いている人なら必ず気になって誰かが勧めなくても一度は聴いてみようと考えると思うので(思わなかった人は思わなくても良いし)、好きな人だけ聴いていれば良いかな、って感じでしょうか。でも、意外と好きな人多いですよね。
ちなみに私は有名なアルバムだけ聴いていて、中には好きなアルバムもあるし、苦手なアルバムもあるし、その他の全てのアルバムを聴いてみたいと思っているわけでも無いし、好きなアルバムは凄く好き、苦手なのは絶対ダメ、という感じです。^^♪
こんにちは。
>インストゥルメンタルでの演奏では本作『Bags' Groove』でのMiles Davisの演奏がベストではないかと
But Not For Meはいい曲ですね。大好きなスタンダードナンバーの1つです。マイルスの演奏がベスト、というのは同感。(チェット・ベイカーのヴォーカル物も大好きです。)
しかし、マイルスって、こういう歌ものをやると上手いですよね。コルトレーンはいつまでたっても、全盛期ですら歌ものはダメだったけど。
bertさん
>>コルトレーンはいつまでたっても、全盛期ですら歌ものはダメだったけど。
コルトレーンは、名演もあるけど、なんとなくギクシャクしてる感じがあります。反対に同じサックスの巨匠、ソニー・ロリンズなんかは、凄く上手いんですよね。
>>チェット・ベイカーのヴォーカル物も大好きです
『チェット・ベイカー・シングス』は私の愛聴盤です。^^♪